著者
金子 陽一 稲石 佳子 中司 貴大 舟越 光彦 岩元 太郎 田村 俊一郎 江島 紀代子 江島 泰志
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.243-251, 2022 (Released:2022-05-25)
参考文献数
30

【背景および目的】近年,経済格差が大きくなり,貧困世帯の割合が増加している.今回私たちは,経済的困難者における脳血管障害の特徴について解析した.【方法】2014年から2018年までの5年間,当院に入院した脳血管障害816例を対象とした.生活保護受給者および無料低額診療利用者の計280名を経済的困難者群とし,残りを対照群とした.これらの症例の病型別割合・発症時年齢・男女比・入院前生活場所・自宅退院率・退院時mRSスコアを,経済的困難者群と対照群間で比較した.【結果】経済的困難者における脳血管障害の特徴は,1.男性患者の比率が高い(特に65歳未満),2.入院前は高率に独居,3.虚血性脳血管障害の平均発症時年齢が男女とも有意に低い,4.脳出血の退院時mRSスコアが増悪傾向,というものであった.【結論】経済的に困難な状況下では,虚血性脳血管障害はより若年で発症し,脳出血の重症度が高くなる傾向がみられた.