著者
江川 良一
出版者
岐阜聖徳学園大学
雑誌
聖徳学園岐阜教育大学紀要 (ISSN:09160175)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.29-47, 1979-07-20

1920年代において, アメリカ史学界を蔽いつくした観のあった安全弁説は, 30年代に入って, フロンティア学説批判中の最大の争点として, 俄かに物議をかもしはじめる。この突然とも見える批判の嵐は何故に生じたのであろうか?本稿では, D・A・シャノンの示唆に基づき, 大恐慌とそれに続くニューディール時代の社会不安との関連において, その原因を追求してみる。そのためにこの時期を, 1929年以後のフーヴァー政権時代, NRA体制とその修正時代, 37年以後の再度の景気後退時代-の三つに別けて, 各々の時点での関連を考察する。その上で, 安全弁説への疑惑の発生, その後の批判活動の波動等が, 29年直後のパニックとは結びつかないこと, むしろニューディール政策とその破綻による社会的・経済的不安が, その原因であったことなどを, 明らかにするのが本稿の目的である。