著者
江本 精 立花 克郎 堀内 新司
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

新たな癌化学療法の治療戦略であるメトロノミック化学療法は少量の抗癌剤を持続的に使用する方法であり、腫瘍血管内皮細胞をターゲットとする。我々はヒト子宮肉腫を対象として本療法の治療効果の増強を図る目的で、メトロノミック化学療法に低出力超音波照射を併用し、その相乗効果について検討した。抗癌剤は塩酸イリノテカンを使用した。子宮肉腫は人体に発生する腫瘍のなかでも最も悪性度の高い腫瘍の一つであるため、本研究には我々が樹立したヒト子宮肉腫株である FU-MMT-3 株を用いた。血管新生阻害作用の評価には circulating endothelial progenitor cells (CEP)を測定した。その結果、FU-MMT-3 株に対して in vitro 及び in vivo においてもメトロノミック投与量の塩酸イリノテカンに低出力超音波照射(2.0 w/cm,1 MHz, 4 分間週3回照射) を併用した治療群が最も腫瘍増殖抑制効果と血管新生阻害効果をもたらした。結論として、メトロノミック化学療法と低出力超音波照射の併用療法は新たな癌治療法として期待できうるものであることが示唆された。