著者
江本 純子
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.92-105, 2017-03-10 (Released:2019-04-15)
参考文献数
28

本稿は,障害者雇用の進むべき方向性の再考,実証を目的とする。 障害者雇用政策は,2000年前後から,関連法・制度改正を重ね,雇用の量的拡大を図ってきた。2013年の法改正では,障害者権利条約に伴い,質的にも拡充を図っており,障害者雇用政策は,大きな転換点にあるが,質の保証は,十分とはいえない。なぜなら,障害者雇用の量と質を拡充するには,当該障害者のみならず,すべての人に有益な社会,共生社会を目指す必要がある。 筆者は,障害者雇用がディーセントワークの実現につながると考え,職場における効用を調査した。結果以下3点が明確になった。第1に,障害者雇用の効用は,仕事の役割分担から,新規事業開拓までさまざまある,第2に,効用をもたらすためには,支援機関・制度の活用と障害者雇用に関する発想転換が重要である。第3に,障害者雇用促進には,個人から政策レベルまで一貫した制度が必要である。本稿は,この調査結果をもとに報告する。