著者
江本 紫織
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.61-72, 2016 (Released:2018-01-01)

Photographs have always been considered as showing the past due to their indexicality. However, this understanding fails to capture how and why viewers perceive time in viewing photographs. This paper presents a more nuanced model, focusing on two key points: annotations which extend photographic contents, such as explanations of photographs, related photographs, knowledge and memories which viewers have, and a triad of semantic organizations – depiction, representation, and reference – which affect viewers’ perceptions. First, this paper will look at the effect these annotations have on perceptions of time in photographs across various viewing situations. Further, we will analyze the connection between these annotations and the triad to help us understand the various and complex relationships photographs have with time, and how these relationships translate to the viewing experience. We will use these insights to explore how perceptions of time can vary based on photographic viewing conditions. By considering all of this as a whole, we can build a greater understanding of perceptions of time in viewing photographs, with much more depth than the current “past” model.
著者
江本 紫織
出版者
日本映像学会
雑誌
映像学 (ISSN:02860279)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.110-129, 2016-07-25 (Released:2016-08-19)
参考文献数
20

【要旨】 これまで写真は、コンテクストやプロセスに対して受動的な位置付けを与えられてきた。その要因となってきたのは、撮影・呈示におけるコード化、観賞でのコンテクストによる意味の規定である。しかし誰もが写真の撮影者・呈示者・観者になり、それぞれの段階に能動的に関与する現在の状況は、従来の議論のみでは説明できない。そこで本論文は写真とコンテクスト、撮影から観賞までの写真プロセスの関係を改めて検討した。詳細な分析を行うために、コンテクストを作用の点で「直接的コンテクスト」(キャプション、呈示媒体など)と「間接的コンテクスト」(文化的・社会的背景、写真技術など)の二つに類型化した上で、コンテクスト・写真プロセス・撮影者や観者の作用関係とその変化を考察した結果は以下の通りである。第一に、従来観賞にのみ作用すると思われた直接的コンテクストは、撮影時にも意識されることが明らかとなった。第二に、デジタル化による写真プロセスと直接的コンテクストの変化は、加工・修正への関与を容易にしただけでなく、直接的コンテクストの変更や、呈示された写真の自由なグループ化など、観者による呈示への能動的な関与も可能にした。そして最後に、これらの写真とコンテクストは次々に増え、蓄積され、新たな写真や写真行為に作用する「一時的コンテクスト」として作用することが示された。以上のように写真とコンテクスト、写真プロセスは有機的な関係性を結ぶものであり、現在の写真は開かれた構造を持つ能動的なプロセスと見なすことができる。このように写真をイメージではなくプロセスと捉えることは、従来の議論の有効性を担保しつつ、現在の写真状況を踏まえた理論の発展につながるはずである。