著者
江浦 由佳
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

我々はこれまでにほ乳類では報告のなかったFZOのホモログをラットにおいて2種類同定し(Mitofusin1,Mitofusin2)、その後の解析から2つのMfnが共にmit融合に必須であり、協調的にmit形態の調節に機能することを明らかにしてきた。さらに複合体に含まれるmitofusinと協調的に機能する新規因子の探索を行った結果、ひとつの新規因子を同定した。これをmitofusin binding protein(MIB)と呼ぶ。今年は昨年に引き続きこの因子の解析を行った。(1)ラット肝臓を用いて内在性のMIB存在様式を解析した。細胞分画を用いて解析した結果、内在性MIBにおいても過剰発現細胞のMIBと同様にmt、ms,及びサイトソルに局在していることがわかった。ミトコンドリアに局在するMIBの膜結合性はショ糖密度勾配遠心をおこなってもミトコンドリア画分に一部回収されることから一部は膜に強く結合していることが示唆された。(2)MIBは酸化還元酵素に保存されたドメインを有しているのでその活性がmt形態への効果に必要かどうか調べるために補酵素結合ドメインにアミノ酸置換の変異を導入した変異体を作成し検討した。その結果、その変異体においてmt形態への効果が消失したことから酵素活性がmt形態への機能に必要であることが示唆された。(3)また同じ酵素ファミリーに含まれるzeta-crystallinがMIBと同様のmt形態への効果を有するかどうかzeta-crystallinのcDNAをサブクローンして解析した。その結果、zeta-crystallinを過剰発現させてもmt形態には全く影響が無かったことから、酵素ファミリーの中でもMIBに特異的な機能であることが示された。(4)Mfn1との相互作用について解析するため、Mfn1リコビンナントカラムを用いて、MIB野生型、酵素ドメイン変異体、zeta-crystallinとの結合実験を行なった。その結果、MIBの野生型のみがMfn1カラムに結合できたことから、MIBの機能はMfn1との結合能力に依存していることが示唆された。(5)MIBのmt形態への効果についてさらに解析するため、RNAiを用いてHeLa細胞の内在性MIBを発現抑制を解析した。その結果、RNAi細胞においてMfn1のRNAi細胞の結果とは逆のmtのネットワークの顕著な活性化が観察された。このことから、MIBはMfn1を介してmt融合を抑制する機能があることが示唆された。