著者
牛込 三和子 笠井 秀子 松下 祥子 輪湖 史子 加藤 修一 川村 佐和子 長谷川 美津子 徳山 祥子 江澤 和江
出版者
(財)東京都医学研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

〔目的・方法〕近年、医療保険制度の改訂など在宅療養支援体制の拡充により、在宅看護対象者に人工呼吸器装着や酸素療法などを必要とする高度の呼吸障害を有する人々が増加している。慢性・進行性の呼吸障害を有する神経・筋疾患在宅療養者における呼吸障害の進行を非侵襲的測定方法によって把握し、換気療法など適切な医療処置の導入やその安全な実胞における看護活動での使用の有用性について検討した。対象は進行性筋ジストロフィ13例(デュシャンヌ型10例、福山型3例)、筋萎縮性側索硬化症10例で、病状進行にそって、長期的に経過を追って資料を収集、神経難病専門看護婦、神経専門医と討論し考察した。〔結果・考察〕1.呼吸障害の早期把握には、進行性筋ジストロフィにおいては、呼吸障害出現前からバイタルサイン、自覚症状観察に加えて換気量計(レスピロメトリ)を用いた1回換気量(TV)および努力換気量(MAX VC)測定、呼吸障害兆候出現が予測される時期からはPCF(peak cough flow)による咳嗽力評価、経皮血中酸素飽和度(パルスオキシメトリ)の夜間睡眠中終夜測定、経皮血中二酸化炭素分圧測定を定期的に行うことが有用である。筋萎縮性側索硬化症においては、病初期から自覚症状の観察と換気量計によるTV、MAX VC、呼吸障害初期徴候出現時期から夜間睡眠中終夜の経皮血中酸素飽和度(パルスオキシメトリ)および経皮血中二酸化炭素分圧の測定を定則的に行うことが有用である。在宅人工呼吸療法導入期看護プロトコールの基礎資料として提示した。2.人工換気補助療法実施者においては、さらなる呼吸障害の進行に伴う換気補助方法変更の判断指標として、経皮動脈血酸素飽和度および経皮血中二酸化炭素分圧測定を定期的に行うことが有用である。3.在宅看護では、測定結果を解釈し、診療計画や看護計画に反映するうえで、ケアチーム各員の相互共働と時間的余裕を見込んだ活動が不可欠である。また、療養者のセルフマネジメント能力を高めることへの支援が重要であり、今後の課題として取り組んでいる。