著者
瓜生 康平 海津 嘉蔵 阿部 理一郎 織田 進 千葉 省三 江藤 澄哉 鈴木 秀郎
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.391-396, 1984-12-01

症例54歳の女性, 昭和54年2月腰痛で発症. 同年11月, 尿蛋白を指摘されて入院. Bence-Jones K type多発性骨髄腫に伴う腎不全と診断された. 骨髄腫に対してcyclophos phamide, Vincristin, prednisoloneの併用療法(Intermittent COP療法)を施行し, 腎不全に対して, 昭和54年12月より腹膜透析を開始した. これ以降肺炎で死亡するまでの26か月間, 腹膜透析による腎不全の治療を十分に継続しえた. 多発性骨髄腫に伴う腎不全は予後不良である. 本症に対する腹膜透析は, 原病による易感染性や近年の血液透析の進歩により施行されることは少なく, 長期生存例の報告はほとんどない. 本症例の長期生存は, 腹膜透析による腎不全のコントロールおよび骨髄腫に対する適切な化学療法によると考えられる. 骨髄腫は高齢者に多く, 血液透析が困難な場合があるが, 腹膜透析は高齢者でも施行しやすく, 今後積極的に応用しうると考えられる.(1984年9月14日 受付)
著者
森田 恵美子 海津 嘉蔵 瓜生 康平 江藤 澄哉
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.197-205, 1990-06-01

糖尿病における尿細管障害の有無を臨床的に検討するために, 外来患者102例(A群)の空腹時来院時尿および入院患者23例(B群)の24時間蓄尿の尿中酵素(NAG, ALP, LAP, γ-GTP)を測定し, 各種検査項目との関連性を検討した. その結果, 1)A群の尿中酵素では, NAG高値例が42.2%と最も多かった. 重回帰分析の結果, NAGはHbAlc, 年齢, 尿蛋白と, 他の3酵素は尿中β2-microglobulinとの関連が認められた. 2)B群では, 87%がNAG高値であるのに比し, 他の3酵素の上昇例は少なく, ほとんどが腎症合併例であった. また, ALP, LAP, γ-GTPには互いに相関が認められたが, NAGと他の3酵素間には相関がなかった. 糖尿病におけるNAG上昇は, その局在性より糸球体上皮細胞と近位尿細管上皮細胞のlysosomal dysfunctionを反映し, ALP, LAP, γ-GTP上昇は腎症による尿細管障害, 即ちbrushborderdamageを反映していると推察された.(1990年2月15日 受付, 1990年3月9日 受理)
著者
佐藤 忠嗣 三砂 將裕 塚田 順一 菊池 亮 織田 進 千葉 省三 江藤 澄哉
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.289-296, 1988-09-01

PWM-SCMを造血刺激因子(CSF)とした軟寒天一層法により, 血清をBSA, コレステロールおよびトランスフェリンで置き換えた無血清培養法のCFU-Cコロニー形成に関する基礎的検討と純化GM-CSFの効果につき, マウス骨髄を用いて検討した. 1)CFU-Cコロニーは培養後4日目をピークとして出現した. 2)CFU-Cコロニー数と培養細胞数との間には直線的な相関関係が認められた. 3)無血清培地はFCS20%を含む血清培地と同等のCFU-Cコロニー形成能を有していた. 4)BSAおよびコレステロールは無血清培地におけるCFU-Cコロニー形成において, 必須であると考えられた. 5)CFU-Cコロニー数は,純化GM-CSF濃度に依存して増加し, 25U/ml濃度添加以上でプラトーに達した. また, 形成されたコロニーの半数以上がGMコロニーであった. 以上の成績から, 無血清培養法は, 血清中に含まれる造血刺激因子に影響されることなく, in vitroにおけるgranulopoiesisを研究する上で有用であると考えられた.(1988年5月10日 受付)