- 著者
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江頭 和道
阿部 和彦
- 出版者
- 日本生気象学会
- 雑誌
- 日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, no.2, pp.97-109, 1988-08-01 (Released:2010-12-10)
- 参考文献数
- 40
- 被引用文献数
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自殺の季節変動は, 古い年代では多くの国においてピークが初夏 (6月) にみられた.日本では1900-09~1920-29には, 自殺のピークは5月と7月 (7月が高値) で, 6月の陥凹は, 梅雨と関係していると思われる.一般に年代とともに季節変動の大きさが減少し, ピーク月は早い方 (4月) へ移動していた.日本では, 寒冷期 (11-2月) の自殺率の増加に対応して, 自殺の季節変動量が低下していた.自殺の季節変動量 (S) と寒冷期の自殺が年間全自殺に占める割合 (△) との間には, 直線的な関係が観測され, ある仮定の自殺の季節変動 (ピークが5-6月, 谷が12-1月, その間は直線的に変化) に基づいて導出されるSと△との直線関係式によってよく説明された.多くの国の自殺の季節変動量は, このモデル直線に沿って年代とともに減少し, 生活水準が高い国ほど, 季節変動量は小さい.各国の自殺の季節変動は, ナーストラリアを除き同じ過程を経て年代的変化をしていたが, その変化の速度は国によって異なった.