著者
江頭 和道 鈴木 尊志 阿部 和彦
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.65-70, 1986-10-15 (Released:2010-10-13)
参考文献数
10
被引用文献数
3

Seasonal variation of suicidal deaths in Japan for 1900-41 and 1947-82 was studied. As suicide seasonality index, we used the sum of deviations of the monthly suicidal rates from the annual average, which was normalized to 100. The long-term trend of the suicide seasonality was negatively correlated to the logarithm of the per capita GNP. The correlation coefficient between them was -0.83 for men and -0.88 for women, respectively (p<0.001) . Elimination of the effect of GNP on suicide seasonality by using the regression line of the latter on the former lead to the “corrected” suicide seasonality. The short-term fluctuations of five-year moving averages of the corrected suicide seasonality resembled to those of annual hours of sunshine. The correlation coefficient between them was 0.69 for men and 0.64 for women, respectively (p< 0.001) . The corrected suicide seasonality was similarly correlated to the sunshine seasonality, and the correlation coefficient between them (each, five-year moving averages) was 0.51 for men and 0.41 for women, respectively (p<0.001) . Although these values are smaller than those obtained for the correlation of the corrected suicide seasonality to the annual hours of sunshine, the differences are not significant. One possible explanation is that annual hours of sunshine and/or sunshine seasonality influence the suicide seasonality and that the two sunshine factors are proportional to each other. With a moving average period more than three years, we obtained significant correlation coefficient between the corrected suicide seasonality and annual hours of sunshine. We discussed the limitation of this study and proposed future studies on the association of suicide with sunshine.
著者
江頭 和道 阿部 和彦
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.3-7, 1990-04-01 (Released:2010-10-13)
参考文献数
8

自殺の季節変動に影響を及ぼす気象学的要因の一つとして日照時間に注目し, 自殺の季節変動の程度を表わす「季節変動量」との相関を調べた.対象資料は1950-57年の北海道の自殺統計である.寒冷期 (11, 12, 1, 2月) の自殺が年間全自殺に占める割合と自殺の季節変動量との間に有意の負の相関 (r=-0.90, p<0.01) , また, 前者と寒冷期の日照時間との間に正の関係 (r=0.42, N.S.) , そして寒冷期の日照時間と自殺の季節変動量との間に有意の負の相関 (r=-0.68, p<0.1) を認めた.寒冷期の日照時間の増加が, 元来は少ない同時期の自殺を増加させ, その結果自殺の季節変動量が減少すると解釈される.気温については自殺の季節変動量との相関を認めなかった.著者らの一連の研究結果と合わせて自殺の季節変動を考察し, 季節変動パターンの年代推移, 経済発展や夏と冬の日照時間との関係などについて言及した.
著者
江頭 和道 阿部 和彦
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.97-109, 1988-08-01 (Released:2010-12-10)
参考文献数
40
被引用文献数
1

自殺の季節変動は, 古い年代では多くの国においてピークが初夏 (6月) にみられた.日本では1900-09~1920-29には, 自殺のピークは5月と7月 (7月が高値) で, 6月の陥凹は, 梅雨と関係していると思われる.一般に年代とともに季節変動の大きさが減少し, ピーク月は早い方 (4月) へ移動していた.日本では, 寒冷期 (11-2月) の自殺率の増加に対応して, 自殺の季節変動量が低下していた.自殺の季節変動量 (S) と寒冷期の自殺が年間全自殺に占める割合 (△) との間には, 直線的な関係が観測され, ある仮定の自殺の季節変動 (ピークが5-6月, 谷が12-1月, その間は直線的に変化) に基づいて導出されるSと△との直線関係式によってよく説明された.多くの国の自殺の季節変動量は, このモデル直線に沿って年代とともに減少し, 生活水準が高い国ほど, 季節変動量は小さい.各国の自殺の季節変動は, ナーストラリアを除き同じ過程を経て年代的変化をしていたが, その変化の速度は国によって異なった.
著者
阿部 和彦
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.369-375, 1979-09-01 (Released:2017-04-11)

ベンザミド系のsulpirideは, 他の向精神薬物に比べて広い治療スペクトルを有し, 抗幻覚・抗妄想作用の他, 抗うつ作用を持っている。したがって, 急性分裂病の他, 或種のうつ状態にも効果が期待出来るが, 効果の確率が最も高いのは分裂病とうつ病の中間位に位置すると考えられる非定型の精神病である。また神経性不食症や, 思春期や前思春期のうつ状態で, 関係念慮が著明な場合もしばしば効果が認められる。この薬物の長所としては, 短期間の使用の場合, 重篤な副作用がまれであること, 効果の発現が早いことと上述の広い治療スペクトルである。
著者
鈴本 尊志 塚本 浩二 阿部 和彦
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.221-230, 1990-06-01
被引用文献数
3

抑うつ状態は種々の精神的ストレスや疲労の影響を現わすものと思われてきた. そこでこれらの関連を知るため職場におけるストレスがどのような精神症状と関連が深いかを職場問題・精神症状・疲労自覚症状の3種の質問表について冗長性分析(Redundancy Analysis)を試みた. 精神症状質問表に含まれる項目には抑うつ・不安・対人過敏・離人・その他の各項目群計40項目が含まれている. このうち職場問題32項目と関連して最も負荷の大きかったのは抑うつ項目であった. 疲労自覚症状30項目については疲労一般症状(項目1-10)と疲労精神症状(項目11-20)の項目の部分に負荷がみられた. この精神症状の抑うつと先の疲労自覚症状, 特に精神症状の項目は相互の関連からみて同じ抑うつ的内容を表わしていると考えられた. 従って職場におけるストレスと抑うつ状態とは関連の深いものといえる.(1989年11月21日 受付,1990年3月24日 受理)