著者
池 玉杰
出版者
長崎外国語大学・長崎外国語短期大学
雑誌
長崎外大論叢 (ISSN:13464981)
巻号頁・発行日
no.8, pp.75-81, 2004

孔子は世界的に有名な思想家であり教育家である。孔子が二千五百年程前に唱えた教育思想、教育理念と教育方法は後世の人々に敬い仰がれている。孔子の儒家思想と理念は世に広く崇拝されている。一人の中国人として、儒家思想と伝統文化に満ちた家庭に生まれた私は、こうした雰囲気に包まれた社会環境の中で成長してきた。孔子の儒家思想は目に見えない形で私の人生観、道徳観および教育観に感化作用を及ぼしているのである。私はいつも道徳意識に基づいて物事を考え、仕事に対して責任感と職業道徳をもって行動する。それがゆえに、外国語教師として、私は授業中、当たり前のように孔子の「教学相長」(教えることと学ぶことが相まって学業の進歩を促すものである)という教育理念と教育方法を運用し、またそれを自分の仕事の理念とするのである。「教学相長」という言葉の出典は『礼記・学記』である。「学然後知不足,教然後知困。知不足,然後能自反;知困,然後能自強也。故曰教学相長也。」(学んでみて、始めて我が知恵の貧しさを知り、教えてみて、始めて我が学問のつたなさに悩む-不足に気が付いて、始めて真に反省することができ、自ら進んで勉強することができる。だから昔から、「教と学とは互いに助長する」と言われている。)「教学相長」は孔子の教育思想と教育理念の中核である。その内容は次のような幾つかの「内核」によって構成されている。すなわち「有教無類」(いかなる人にも等しく教育を与える)、「因材施教」(その人に適した教育をする)と「学而不厭、海人不倦」(学んで厭きない、人を教え導いて倦むことない)の三点である。本稿は主にこの三つの「内核」、即ち「教学相長」に基づいて、自分の仕事経験を生かして、私見を述べたい。