著者
池上 敏幸 山田 弘幸 原 修一
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.140-147, 2019 (Released:2019-05-24)
参考文献数
27

7例の構音障害児について,外的語音弁別能力(他者が発した語音を弁別する能力)を聴覚的絵ポインティング課題にて検討した.対象とした構音障害児は,すべて構音訓練を受けたことがなかった.健常3歳児および4歳児(各10例)を対照群とした./k//s/を語頭音とした2モーラ語「かめ」「さめ」に,後続音を統一した「あめ」「まめ」を加えた四分の一選択課題を行い,正答数および語彙選択率を算出し,反応時間を計測した.その結果,語頭音/k/を置換している構音障害児群の外的語音弁別能力は,健常4歳児群と同程度であった.しかし,語頭音/s/を置換している構音障害児群に関しては,健常3歳児群と同程度の外的語音弁別能力であることが示唆された.構音障害児の外的語音弁別能力には,構音の誤り方の種類によって,弁別しやすい音と弁別しにくい音がある可能性があり,正しい構音の獲得には,自己の産生音に対する構音の自覚が重要であると考えられた.