著者
中内 道世 池本 重明 山西 妃早子 尾崎 嘉彦 築野 卓夫 野村 英作 細田 朝夫 谷口 久次
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.183-188, 2002-07-31
参考文献数
18
被引用文献数
1 7

合成したフェルラ酸誘導体31種類について, 細菌, カビ, 酵母に対する抗菌活性を評価した。供試した化合物のうち, 12種類の化合物がグラム陽性細菌, カビおよび酵母の増殖を抑制することを見い出した。それらのうちMICの測定に供した化合物のほとんどがフェルラ酸より抗菌力が向上した。フェルラ酸ブチルとフェルラ酸-2-メチル-1-ブチルは, <I>B. subtilis, S.aureus, S. cerevisiae</I>に対して顕著な増殖抑制を示した。フェルラ酸ヘキシルは, <I>B. subtilis, S.aureus</I>の増殖を顕著に抑制したが, カビ, 酵母に対してはその増殖に影響を与えなかった。一方, フェルラ酸メチル, フェルラ酸エチルはグラム陰性菌を除くいずれの供試菌に対しても増殖抑制作用を有し広い抗菌スペクトルを示した。フェルラ酸エステル類の抗菌活性は, アルキル基鎖の伸長に伴いグラム陽性細菌に対する抗菌力が向上し, 同時に細胞毒性も増すという傾向が認められた。フェルラ酸メチルおよびフェルラ酸-2-メチルー1-ブチルについては, 市販の食品保存料であるソルビン酸や安息香酸と同程度またはそれ以上の抗菌活性を有し, 細胞毒性試験でも100μMの濃度では, マウス由来線維芽細胞株Balb/c3T3A31-1-1の増殖にほとんど影響を与えず, 新たな食品用抗菌剤として検討できるレベルにあることが示唆された。