著者
池田 仁人 戸北 凱惟
出版者
日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.1-9, 2004-05-17
被引用文献数
6

子どもたちの科学概念は、認知的要素と、情意的な要素により構成される。それは「知的な気付き」の獲得に必要な要素と重なる。そのため、本研究では、小学校低学年における理科教育の基礎として、自然教材に触れる中で生まれる「知的な気付き」に着目した。本研究は、言葉を手がかりに、生活科の学びの場から子どもたちの「気付き」を取り出し、どのような「気付き」をしているのか、今まで着目されてこなかった子どもだけでいる場面も含め、学校臨床場面から再点検していくこととした。「知的な気付き」の発現を促す学習環境づくりのために、教師周辺、子どもだけでいる場といった、学習場面による「気付き等」のあらわれ方の違いについても調査を行った。その結果、子どもたちの発言を、5つのカテゴリにあらわすことができた。その中の「科学の基礎的発言」は認知面、情意面において「自然事象にかかわる知的な気付き」を表すものである。また、この発言群は、学習活動場面の違いにかかわらず同じように発現することがわかってきた。これにより、教師付近の発話が全体の学習材へのコミットメントを推定する材料となることが明らかになった。また、「共感的な発言」は、他者に対する理解、能動的なかかわりを示す、「人にかかわる知的な気付き」を表すものであり、学習場面の違いに影響されている可能性がある。また、5つの発言はそれぞれ独立して活動の一場面に表れるのではなく、互いに影響し合いながら活動を構成している。ある発言が他の子どもの対象へのかかわりを強めたり弱めたりすることもある。