著者
池田 友仁 志賀 和人 志賀 薫
出版者
一般財団法人 林業経済研究所
雑誌
林業経済 (ISSN:03888614)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.9-28, 2017 (Released:2017-07-01)
参考文献数
21

本論文では、2000年に地種区分の見直しが行われた秩父多摩甲斐国立公園を事例に地域制国立公園の理念が地種区分と施業規制にどのように反映されているか、その実態を明らかにした。このため、国立公園地域の施業規制の実態と森林所有者に対する地種区分の決定過程を検討し、多摩川・荒川源流部の埼玉国有林と水道水源林の森林管理計画と施業区分の変遷から地種区分の変更が森林施業に与えた影響を小班単位に分析した。地種区分の見直しの際に国・都県と東京大学秩父演習林には、関東地方環境事務所から事前協議が行われたが、東京大学秩父演習林以外では当時の記録は確認できず、私有林所有者への対応は関係都県に任され、公示後に初めて見直し結果を知ったとする私有林所有者もみられた。土地所有権の制限を伴う地種区分の根拠と決定過程の透明性の確保や多様性を持つ地権者の森林管理の実態解明とともに専門的技術者や情報を持たない私有林所有者に対する支援が必要となる。