- 著者
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志賀 和人
- 出版者
- 一般財団法人 林業経済研究所
- 雑誌
- 林業経済 (ISSN:03888614)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.6, pp.1-18, 2003-09-20 (Released:2017-08-03)
- 被引用文献数
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5
本論文では、スイスの連邦森林法に基づく森林管理に関する上級監督とカントンによる森林法の執行が具体的地域においてどのように実施され、森林経営とどのような関係にあるか、カントン・ベルンでの実態調査と統計分析から明らかにする。スイスの森林経営は、公共的森林を対象に連邦資格を有するフェルスターを経営責任者とし、事務所や車両、機械施設を備え、数人の林業労働者を雇用する林業組織として存在する。森林経営収支は1980年代以降、悪化しているものの、施業管理水準は高く、それを支える技術者の養成システムも確立している。一方、森林管理は、林務組織による私有林を含めた森林管理区に対する森林法に規定された任務の執行を意味し、ゲマインデ・フェルスターが管轄する森林管理区ではカントンが市町村・市民ゲマインデに分担金を支払い、カントン森林法に基づく選木記号付け、伐採許可、助言活動、森林現況の監視などの業務を委任している。以上のスイスの森林管理・経営組織の存在形態を踏まえ、日本とスイスの地域森林管理のあり方を比較し、日本の森林管理・経営概念の問題点を指摘した。