著者
池田 正浩
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

Aquaporin (AQP)分子種とは、疎水性の脂質二重膜である生体膜を水分子が透過する通路として同定されたタンパク質分子種で、現在では、200以上のAQP分子種が、微生物から脊椎動物に渡って存在することが明らかにされ、生命を維持する上で根本的なタンパク質分子の一つであると見なされるようになった。申請者のグループは、最近新しいAQP分子種であるAQP11を世界に先駆けて発見した。しかしながらAQP11が細胞のどこに局在するのか、どのような分子形態で存在するのか、AQP11の生理学的意義付けは何かなどについては、全く明らかにされていない。本研究では、これらの点を明らかにすることを目的とした。(1)AQP11の細胞内局在GFPやmycなどのタグをAQP11に融合させて細胞に発現させ、イメージング法により細胞内の局在を調べた。その結果AQP11は主として小胞体に局在すること、そして少ないながら一部は核膜および細胞膜にも局在することを観察した。次に、小胞体局在に関係するアミノ酸配列について部位特異的突然変異法などの手法を用いて検討した結果、AQP11のC末端側に存在しているNKKEモチーフ、およびCys-101は、AQP11の小胞体局在には関係していないことが明らかとなった。また、AQP11のC末端側に存在しているNKKEモチーフが、ER exitシグナルとして働いている可能性を見出した。(2)AQP11の分子構造現在までに分子構造が明らかにされているAQP分子種は4量体を形成して、細胞膜に存在することが知られている。この点について、pull-downアッセイ法やタンパク質架橋法などを用いて検討した結果、AQP11が4量体を形成すること、この多量体形成にCys-101が関わっていることなどを見出した。(3)小胞体ストレスが生じた場合のAQP11の役割についてAQP11発現量が減少したマウスに、虚血再灌流による小胞体ストレスを負荷したところ、そのマウスの表現型には、変化は認められなかった。しかし、今回の系は、AQP11の発現を完全に抑えた系ではなかったため、小胞体ストレスが生じた場合のAQP11の役割については、今後も検討する必要がある。以上の成果の一部は論文としてまとめ、現在投稿中である。