著者
池田 隆英
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
no.25, pp.37-47, 2019-03-12

本研究は、「新しい科学論」の問題意識に立ち、「学校問題」における「子ども/大人」関係の構図と論理を描こうとするもので、本稿では、「いじめ問題」に関する先行研究の知見を対象にメタ分析し、その位相や配置から成る言説空間を後づけた。まず、レビュー論文27本を対象に、「いじめ問題」の「語られ方」を抽出した。その結果、論者の専門領域や関心領域に焦点を当てた知見にいくつかの傾向が読み取れた。しかし、レビュー論文の知見は、現実の「いじめ問題」に活用するには限界がある。そこで、「いじめ問題」の学術論文(1056 本)を渉猟してメタ分析を行った。先行研究のテーマは、大別して20項目の「下位カテゴリー」、さらに抽象化した4項目の「上位カテゴリー」に分類できた。レビュー論文の知見を比較するため、「上位カテゴリー」である「現象」、「要因」、「防止」、「予測」によって分析すると、レビュー論文の視野が明らかになった。一方、先行研究1056 本を「下位カテゴリー」「上位カテゴリー」で分析すると、「現象」「因果」といった「事後の分析」から「防止」「予測」といった「事前の分析」へと移行しつつあることがわかった。危機管理の問題意識に立てば、「想定外の事態」を回避・軽減するには、「いじめ問題」をめぐる言説を広くとらえ、事態を単純化しないことが重要である。