著者
岡本 健介 山本 まき恵 谷口 敏代
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.49-57, 2018-03-12

本研究は障害者支援施設における不適切なケアの因子構造を明らかにすることを目的とした。中国地方5県の障害者支援施設217 施設を対象とし、生活支援員577名(有効回答率44.3%)を分析対象とした。不適切なケアを「障害者虐待防止法に定義されている障害者虐待とは言えないが、利用者の尊厳やプライバシーを損なう恐れのある職員による言動」と定義し、先行研究を参考に26項目を選定し、探索的因子分析及び検証的因子分析を行った。その結果、障害者支援施設に従事する生活支援員の不適切なケアは、「不当な言葉遣い」、「施設・職員の都合を優先した行為」、「プライバシーに関わる行為」、「職員の怠慢」、「自己決定侵害」の計17項目からなることが見出された。いずれの因子も利用者の尊厳を支える支援が求められている内容で構成され、不適切なケアの延長線上にある虐待防止に役立つと考えられる。This study attempts to determine the factorial structure of inappropriate care in support facilities for the disabled. [Method] The present study examined 577 residential support care workers working in 217 support facilities for the disabled in the five prefectures of the Chugoku Region. The valid response rate was 44.3%. Inappropriate care was defined as "language and behavior by employees that does not rise to the level of cruelty as specified in the Act on the Prevention of Abuse of Persons with Disabilities, but carries the risk of violating the privacy and dignity of facility users." Based on this definition, 26 items were selected using past studies as references and subjected to exploratory and confirmatory factor analyses. This resulted in the generation of 17 items concerning inappropriate care by residential support care workers working in support facilities for the disabled that could be organized into the following five factors: "use of unjustified language;" "conduct that prioritizes the convenience of facility and staff member;" "conduct related to privacy issues;" "negligence of staff member;" and "violations of the right to self-determination." All factors contain elements that suggest the need for supporting the dignity of facility users, and are believed to be useful for preventing acts of cruelty manifested through the extension of inappropriate care.
著者
二宮 一枝 名越 恵美
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.163-168, 2015-03-12

南オーストラリア州の看護師教育は大学(3 年間)で、准看護師はTAFE(18 ヶ月)で行われている。免許は毎年20 時間の継続学修をうけて更新する。 看護師は侵襲性の高い処置を行い、開業助産師は薬剤の処方権を有し、高度実践看護師(専門看護師CNSとナースプラクテショナー)も活躍している。保健師免許はないが、コミュニティではCNSが、州政府の看護行政担当にはコミュニティや看護管理経験等が必要である。小学校では教職員が州のマニュアルに基づき、輪番でファーストエイドを行っている。 州政府は“Nursing and Midwifery Strategic Framework 2013-2015” に基づき、看護の質向上に努めている。アデレイド大学の看護基礎教育はロイヤルアデレイド病院等と連携して Nursing and Midwifery Board of Australia の規定に基づくカリキュラムに沿って行われている。
著者
楽木 章子 藤井 厚紀 東村 知子 八ッ塚 一郎
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.149-155, 2018-03-12

養子、養親、および養子の実父母に対して学生が有するイメージに焦点をあて、学生が養親当事者と交流することによって、そのイメージがどのように変化したかを、当事者との交流前と交流後のアンケート調査を比較することを通して明らかにした。分析の結果、①養子の実父母についての批判的なイメージが同情的なイメージに変化すること、②養子についての「かわいそうで心配な」イメージが減少し、これに代わって「その他(自由記述)」の回答が顕著に増加することが見出された。また自由記述の回答の増加を、養子に関するイメージの多様化として捉え、単語の出現頻度、新出単語、単語同士の連関に着目して再分析した結果、「普通」という単語の出現、および、「普通→子ども」「普通→家庭」という連関が新たに生じていることが見出された。このことから、当事者との交流は、学生に養子縁組家庭を身近なイメージをもたらす効果があることが明らかになった。This paper focused on stereotypes of adoptive family in Japan, i.e. adoptive parents, adopted children, and their birth parents. An adoptive mother was invited to talk about her experience to University & College student in 5 classes. The effect of the talk was examined by comparing the pre- and post-class questionnaires. The results revealed that (1) negative images of birth parents changes to sympathetic ones, (2) free description about adopted children in questionnaire significantly increases contrary to decreased pity stereotypes. Focusing of the words in free description, the word "ordinary '" was newly appeared and the word "ordinary" and "children/family" were linked together. It was found that the tales by an adoptive mother made the students feel closer to adopted families.
著者
網野 裕子 沖本 克子
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
no.25, pp.1-8, 2019-03-12

本研究は、注意欠如/ 多動症(以下、AD/HD)をもつ母親の育児に焦点をあてて文献検討を行い、その育児の特徴と課題を明らかにすることにより、日本におけるAD/HD をもつ母親への育児支援に対する示唆を得ることを目的とした。「AD/HD をもつ母親」「育児」の記載がある25 文献を対象とし、AD/HD をもつ母親の育児の特徴について、類似のものを集めてカテゴリー化した。その結果【子どもに対する否定的なかかわり】【子どもに対する良好なかかわり】【低いモニタリング力】【子どもへの影響】【育児に対する母親のネガティブな知覚】【ソーシャルサポートに対する満足感】の6カテゴリーが抽出された。日本を対象とした研究は2件であった。また、支援に関する研究は1件のみであった。今後、日本において、AD/HD をもつ母親の育児に関する研究の蓄積を図るとともに、支援に関する研究も必要であることが示唆された。
著者
楽木 章子 東村 知子 八ッ塚 一郎
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
no.25, pp.75-85, 2019-03-12

家族関係の多様化にも関わらず、今なお、大多数の日本人にとって、「家族とは血縁で結ばれた親子を基本にする」という直結規範(産むことと育てることを直結させる家族観)が、その根底にある。この家族観は、「血縁のない親子をも認める」という分離規範(産むことと育てることの分離を是認する家族観)と対立し、養子縁組家庭の存在を意識的・無意識的に疎外している。本研究では、圧倒的多数派(直結規範)による支配的言説と、これに対する圧倒的少数派(分離規範)の対抗言説を言説領域ごとに検討する。具体的には、(1)学校という空間における支配的言説とその対抗言説、(2)実父母に対する支配的言説とその対抗言説、(3)身近な人々による支配的言説とその対抗言説、(4)メディアによる支配的言説と対抗言説を取り上げ、これらを具体的な事例に即して検討する。
著者
趙 敏廷 原野 かおり
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
no.25, pp.127-135, 2019-03-12

本研修は、韓国における社会福祉・高齢者福祉の現状及び日本との違いを学ぶとともに、言葉の壁を超えた国際交流を通じて、主体的に考え、実行することの意義や今後自身の専門知識をどう活かしていくかを広い視野をもって考えるきっかけとなることを目的として企画した。保健福祉学科の学生6 名と引率教員2名で韓国を訪問し、研修を行った。研修のふり返りから得られた成果として、「新たな知識につながる異文化体験」「異文化交流・体験からのきづき」「さらなる異文化学習への動機付け」が確認できた。効果的な学習となるためには、事前準備のなかで学生の意見や希望を反映し、現地の関係者と綿密に打ち合わせをすることが必要であることが示唆された。
著者
池田 隆英
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
no.25, pp.37-47, 2019-03-12

本研究は、「新しい科学論」の問題意識に立ち、「学校問題」における「子ども/大人」関係の構図と論理を描こうとするもので、本稿では、「いじめ問題」に関する先行研究の知見を対象にメタ分析し、その位相や配置から成る言説空間を後づけた。まず、レビュー論文27本を対象に、「いじめ問題」の「語られ方」を抽出した。その結果、論者の専門領域や関心領域に焦点を当てた知見にいくつかの傾向が読み取れた。しかし、レビュー論文の知見は、現実の「いじめ問題」に活用するには限界がある。そこで、「いじめ問題」の学術論文(1056 本)を渉猟してメタ分析を行った。先行研究のテーマは、大別して20項目の「下位カテゴリー」、さらに抽象化した4項目の「上位カテゴリー」に分類できた。レビュー論文の知見を比較するため、「上位カテゴリー」である「現象」、「要因」、「防止」、「予測」によって分析すると、レビュー論文の視野が明らかになった。一方、先行研究1056 本を「下位カテゴリー」「上位カテゴリー」で分析すると、「現象」「因果」といった「事後の分析」から「防止」「予測」といった「事前の分析」へと移行しつつあることがわかった。危機管理の問題意識に立てば、「想定外の事態」を回避・軽減するには、「いじめ問題」をめぐる言説を広くとらえ、事態を単純化しないことが重要である。
著者
上岡 由華 奥田 美香 名越 恵美
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
no.27, pp.57-65, 2021-03-12

本研究の目的は、緩和ケア病棟看護師の倫理的関心と「その人らしさの尊重」に関する看護実践を明らかにすることである。研究参加の同意が得られた緩和ケア病棟に勤務する一般看護師13 名を参加者とし、半構造化面接で得たデータを質的帰納的に分析した。その結果、看護師の倫理的関心と「その人らしさの尊重」の看護実践は【患者の存在と歴史を認識】【患者の人としての生活へよせる関心】【その人らしさへ接近するための基盤づくり】【患者に反映されている思いへの接近】【意図しないその人らしさの把握】【共通認識のための情報共有】【患者の希望を叶えるための寄り添い】【患者・家族の優先度の調整】の8 カテゴリーで構成され、[基盤づくり]と[接近と介入]の2 局面が導き出された。これらは看護の基盤となる、関係性の倫理に基づく関心とケアリングであった。「その人らしさの尊重」をするために実践能力を磨くだけではなく、患者に接近できるなど患者の本質を理解する力を養う必要性が示唆された。
著者
倉本 亜優未 谷口 将太 杉山 京 仲井 達哉 竹本 与志人
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
no.25, pp.65-73, 2019-03-12

本研究は、居宅介護支援事業所の介護支援専門員(以下、CMr)を対象に、認知症に関する知識尺度を検討することを目的とした。近畿、中国(岡山県を除く)、四国、九州・沖縄地方に設置されている居宅介護支援事業所から層化二段抽出法により選定した3,000 ヶ所の事業所に勤務するCMr 3,000名を対象に無記名自記式の質問紙調査を実施した。解析には当該項目に欠損値のない808名分の資料を用い、まず地域住民を対象として三上ら(2017)が作成した認知症に関する知識尺度の交差妥当性の検討を行った。次いで、認知症に関する知識尺度の精度を検討することを目的に、項目反応理論(2母数ロジスティックモデル)を用いて各項目の識別力、困難度および尺度全体のテスト情報量を算出した。その結果、CMrにとって平易な項目で構成されている可能性が否定できないものの、認知症に関する知識尺度がCMrに援用できる可能性が示唆された。
著者
趙 敏廷
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
no.27, pp.9-18, 2021-03-12

本研究は対人援助における自己成長感の概念について概観し、介護領域の自己成長感に関する今後の課題を明らかにすることを目的として文献検討を行った。CiNii を用いて教育領域、看護領域、保育領域、介護領域の自己成長感に関する文献検索を行い、基準を満たした論文54 編を分析対象とした。結果、対人援助における自己成長感の概念や関連要因が概ね確認できた。介護領域の自己成長感については、次の知見が得られた。第一に、対人援助における研究の知見を踏まえて、介護領域における自己成長感の概念について検討する必要がある。第二に、家族介護者を対象とした研究の知見を踏まえて、介護職員に焦点をあてた自己成長感に関する研究が望まれる。第三に、介護職員の多様な背景を考慮した自己成長感について検討する必要がある。今後、介護職員の自己成長感を促進する資料を得るため、介護職員の自己成長感の特徴や関連要因の解明を行う研究が求められる。
著者
合田 衣里 竹本 与志人
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.1-7, 2018-03-12

[目的]通所介護事業所に勤務する生活相談員のソーシャルワーク実践に関する動向と今後の課題を文献検討より明らかにすることを目的とした。[研究方法]医学中央雑誌Web(以下、医中誌)及びCiNii を用い、「通所介護」or「デイサービス」、「生活相談員」or「ソーシャルワーカー」、「ソーシャルワーク」をキーワードに文献検索を行った。[結果]データベース検索より抽出した論文11 編のうち、基準を満たす論文の総数は3 編であった。追加した論文2 編を加えた5 編を分析対象とした。これらを精査した結果、業務内容について概ね明らかになってきた。[結論]今後は潜在クラス分析などの検証により、生活相談員のソーシャルワーク実践の実態解明を行う研究が求められる。Purpose:The purpose of this study was to clarify a current study level and future research theme, investigating many articles about social work practice by social workers in day service centers.Methods:I conducted a Systematic Literature Review of many studied social work practice in social workers in day service centers, using some databases (CiNii et al.).Results:Out of 11 articles which were searched from the database, three met the selection criteria. Then two other articles were added and the five articles in total were examined.Conclusion:Further study is to clarify various states of social work practice by social workers, using latent class analysis.
著者
山本 まき恵 森脇 あき 谷口 敏代
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.117-124, 2018-03-12

【目的】中堅以上の介護福祉士が講師を担うことに関連した「やりがい」の要因を明らかにする。【方法】担当業務の独力遂行が可能な介護福祉職経験5 年以上を中堅介護福祉士とし、介護福祉現場での本務の傍ら、研修会の講師を担っている中堅以上の介護福祉士9名を対象とした。50 ~ 60分程度の半構造化面接を行い、SCAT(Step for Cording and Theorization)法を用いて分析した。【結果】「受講生が現場で頑張る姿や成長している姿に触れると、後継者育成に貢献出来た自負がある」「講師をすることで、自分の現場での指導の質が上がり、全体のスキルアップにつながる。担当講義内容は、自身の介護福祉技術向上の機会となる」「外部講師の役割を担うことへの上司や職場などから理解ある環境がある」などの17項目の理論記述が抽出できた。【結論】講師役割は中堅としての自負や存在価値を実感していた。上司や職場管理者の理解ある環境がやりがいにつながっていることが明らかになった。[Purpose] This study attempted to elucidate factors related to worthwhileness among professional care givers ranked mid-level and above who experienced being an instructor.[Method] The present study examined nine certified care workers ranked mid-level and above who teach training workshops in addition to their regular job at care facilities. Mid-level was defined as persons with five years or more of work experience who are capable of discharging their duties independently. Semi-structured interviews lasting about 50 to 60 minutes were analyzed using the Steps for Coding and Theorization method.[Results] Analysis produced a total of 17 theoretical description including the following items: "I feel proud of my ability to contribute to the development of successors when I see my students working hard and growing in the workplace;" "being an instructor enhances the quality of my supervision of my workplace and my overall skills, and the contents of my lectures provide an impetus for improving my own care techniques;" and "my superiors and workplace express understanding toward my role as an instructor or a visiting lecturer."[Conclusion] Through their experiences as instructors, participants realized a sense of pride and meaningfulness as a certified care worker ranked mid-level and above. Furthermore, an association was observed between worthwhileness and understanding among superiors and managers at workplaces.
著者
近藤 理恵 黒木 保博 朴 志先 桐野 匡史
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.87-94, 2015-03-12

本研究は、2013 年12 月に韓国において行った面接調査をもとに、近年の韓国の養子縁組政策の動向について明らかにすることを目的とした。面接対象は、「中央養子縁組センター」、「ホルト児童福祉会」、「東方社会福祉会」、「未婚母子家族福祉施設」であった。韓国では、民間団体による養子斡旋が活発であるが、2011年の養子縁組特例法の全面改正以降、①裁判所が養子縁組に関与したり、②子どもが自らの出自を知ることができるシステムがより一層整備されたり、③養子縁組に関わるケース・マネジメントが確立されたことにより、以前よりも養子縁組をされる子どもの権利が擁護されるようになったことが明らかとなった。また、韓国では、非婚の母親と子どもへの差別が強いため、彼女たちが生きにくい状況があるが、今後、養子縁組政策と並行して、非婚の母親と子どもが安心して暮らせるシステムづくりを推進していく必要があることが明らかとなった。
著者
原野 かおり 出井 涼介 桐野 匡史 谷口 敏代 中嶋 和夫
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.101-107, 2016-03-12

本研究は介護技術に関する測定尺度を開発し、その妥当性と信頼性を検討することを目的とした。 X 県内の介護保険施設に従事する主任および管理者を対象にインタビューを行い尺度の原案を作成した。その後X県内すべての特別養護老人ホームおよび老人保健施設に勤務する介護福祉士を対象に郵送法による自記式質問紙調査を行った。統計解析では「介護技術評価尺度」を構成する10 領域を第一次因子、介護技術を第二次因子とする10 因子二次因子モデルを仮定し、因子構造の側面から見た構成概念妥当性を確認的因子分析により検討した。分析には各項目に欠損値を有さない750 人分のデータを使用した。「介護技術評価尺度」の10 因子二次因子モデルのデータに対する適合性及びCronbach のα信頼性係数は統計学的に支持された。「介護技術評価尺度」は、介護関連施設等に従事する介護労働者の介護技術を測定可能な尺度であることが示唆された。
著者
國司 悠莉子 浅井 美穂
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.99-104, 2019-03-12

近年、植物質の発酵に関わる「植物性乳酸菌」が注目されており、その中でも甘酒は人工甘味料の代替品としても注目されている。今回の研究では、女性が続けることが出来る健康習慣の1つを提案する事を目的とし、A大学の学生(21~22歳)に甘酒水を摂取する事をライフスタイルの中に取り入れ4週間継続してもらった。結果として、排便については日本語版便秘評価尺度(CAS)の合計得点の平均値に有意差は見られなかったが、ブリストルスケールによる便の形状では、甘酒摂取群10名中4名の便は軟化し、4名が普通便の状態を維持していた。疲労については、青年用疲労自覚尺度の合計得点に有意差は見られなかったが、項目ごとに見ると集中力と身体的違和感の2項目において得点の有意な差が見られた。考察として、甘酒摂取後の便秘尺度の平均得点は低下しており、ブリストルスケールにより評価した便の形状は軟化を示しており、甘酒による便秘改善効果を可能性として否定できず、疲労に関しては、甘酒に含まれるアミノ酸が脂質代謝を亢進し、ビタミン類は脂質や糖質の代謝を高め、疲労改善効果を引き起こした可能性がある。また、疲労を改善することは腸内環境の改善にもつながるため、疲労改善が結果的に便秘改善へとつながる可能性が示唆された。
著者
荻 あや子 玉谷 奈都美 岡山 加奈
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.131-141, 2015-03-12

本研究は大学生が入院患者であると想定し、看護師のどのような化粧が、患者に好印象を与えるのかを明らかにすることを目的に、A 大学3 学科の学生126 名に質問紙調査を実施した。その結果、濃い・派手な化粧の印象は「話しかけにくい・近づきにくい」「怖い」が多く、薄い・地味な化粧の印象は「話しかけやすい・近づきやすい」「清潔」が多かった。看護師の化粧A(薄)~ E(濃)の評価では、化粧B が最も高く、化粧A、C、D、E の順に低くなった。5 項目の平均評価得点は化粧A ~ C までが3 点以上であった。項目ごとでは、化粧A は真面目さの評価が高く、化粧C、D では明るさの評価が高かった。看護師の化粧では、化粧A のファンデーションと眉ずみに化粧B のチークと口紅を加え、顔色を健康的で明るい印象にすることで患者に好印象を与え、評価が高まることが示唆された。
著者
佐藤 成美 山内 さつき 高林 範子 石井 裕
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.45-55, 2015-03-12

本研究の目的は、マスク着用による音声への影響と話し手の音声の特徴が聞き手の聞き易さにどう影響しているかを、音声分析により明らかにすることである。音声実験では、被験者6 名に日常生活会話と同程度に話す「標準音声」、大きく・はっきり・ゆっくりと、を意識して話す「明確音声」をマスク非着用時と着用時で録音した。次に聴取実験では、別の被験者10 名に録音した音声を聞かせ、どちらが聞き易いか【声の大きさ・声の高さ・話す速度・間隔・アクセント】を基準に評価させた。その結果、マスク着用時の「標準音声」と「明確音声」の声の大きさには、有意な差は認められなかった。これは、マスク着用により発声が妨げられたことによるものと考えられた。また、聞き易い音声とは声の大きさだけではなく、抑揚をつけ話す速度も遅くすることが聞き易い音声にとって必要な項目であり、マスク着用時の円滑なコミュニケーションに繋がるという示唆が得られた。