著者
沖津 進 高橋 啓二 池竹 則夫
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.149-155, 1985-12-25
被引用文献数
1

東京都西郊の多摩ニュータウン付近で,落葉広葉樹二次林中のコナラの種子生産を,16本を伐倒し,着果種子を直接数えることによって調査した.1.伐倒木のD. B. H.は8cmから37cmで調査地付近の林冠構成木のほぼ最小から最大までを含んでいた.これらの総健全果数はゼロから878個におよんだ.2.総健全果数は個体ごとに大きく異なり,また,D. B. H.,幹長,樹齢,樹冠投影面積とは明瞭な相関関係は認められなかった.樹冠投影面積1m^2当りの着果数はゼロから54.2個であったが,同じく個体間の差異は大きかった.3.個体ごとの総健全果数は年平均直径成長と大まかながら相関関係が認められ,直径成長の良い個体ほど着果数が多くなる傾向がある.4.枝ごとの着果も枝ごとに差異がみられたが,相対枝順位と枝直径との組み合わせである程度の傾向がみられた:同一順位の枝では太い枝のほうが着果が良かった;直径8cm以下の枝では同程度の直径の枝の場合上位の枝のほうが着果が良かった;直径8cm以上の大枝ではむしろ下位の枝のほうが着果が良くなる傾向にあった.5.枝方位別では南や西向きのものが,北や東向きのものに比べてやや着果が良かった.6.以上のようにコナラ種子生産は個体間や同一個体の枝間で大きく異なるため,小数の種子トラップからの種子生産量の推定は危険であると考えられる.