著者
山上 浩 荻野 秀光 梅澤 耕学 久米 菜央 池谷 佑樹 大淵 尚 山本 真嗣
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.738-741, 2015-12-28 (Released:2015-12-28)
参考文献数
6

腹部大動脈瘤破裂は,腹痛,ショック,腹部拍動性腫瘤を古典的三徴とするが,失神など非典型的症状で来院することもある。今回,痛みを伴わない失神で,来院時正常域血圧を示した腹部大動脈瘤破裂を経験した。症例は70代男性。畑仕事後に前兆なく失神し,救急搬送された。来院時,意識清明,血圧110/83mmHg,脈拍92回/ 分,身体所見では全身に発汗を認めた以外に特記すべき異常なし。前兆のない失神であり,心血管性失神を疑い胸部レントゲン撮影,心筋マーカーのチェックと経胸壁心臓超音波を行うも異常はなかった。来院約2時間後に腰痛を訴え,収縮期血圧が50mmHg台に低下した。大動脈CTで腹部大動脈瘤破裂と診断し緊急手術を行ったが,大量出血によるDICを生じ,術翌日に死亡した。腹部大動脈瘤破裂は痛みを伴わない失神で来院し,正常域血圧を示すことがある。心血管性失神を疑う例では,腹部大動脈瘤破裂の除外が必要である。