- 著者
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沈 煕燦 (2011)
沈 熙燦 (2009-2010)
- 出版者
- 立命館大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2009
本研究は、植民地朝鮮に設立された「朝鮮史編修会」という歴史編纂機関を取りあげて、近代史学の特質やその性格を明らかにすることを目的とする。とりわけ、「植民史学の総本山」として評されるのみであって、もっぱら否定と批判の対象としてしか取り扱われなかった「朝鮮史編修会」とその作業を、植民地朝鮮における「実証主義史学」、つまり「近代歴史学」の成立と展開という側面から分析することに力を注いできた。それは今日の日韓における歴史学全般の問題までをも視野におさめる格好の素材でもあると思われるからだ。そのような問題にとり組むため、活溌な史料調査を行った。なかんずく、韓国での現地調査をつうじていまや日韓友好の表象となっている「金忠善/沙也可」が、歴史学においてどのように語られてきたのかを、「朝鮮史編修会」の修史官であった中村栄孝の著作を中心として穿鑿した。また、朝鮮の三大天才とも呼ばれた崔南善の著作を中心として、被植民者が歴史学に託した抵抗の試みとその屈折を綿密に調べた。昨年度(2011年度)は、採用期間の最終年でもあったため、以上の研究成果を含む3年間の蓄積を文章化することに傾注した。とりわけ、いくつかの学会や研究会などで報告を行い、それらの成果を論文としてまとめた。また、昨年7月の『現代思想』の震災に関する臨時特集号に寄稿をも行った。なお、博士論文を年度末に提出し、審査を待っている状況である。