著者
黄 當時 沖村 由香
出版者
佛教大学文学部
雑誌
文学部論集 = Journal of the Faculty of Letters (ISSN:09189416)
巻号頁・発行日
no.103, pp.97-110, 2019-03

古代日本語の語彙には、日本語一視点のみでは正確に理解できないものがある。現代日本語は前置修飾構造である。しかし、かつて日本社会には、後置修飾構造を持つ言語が存在し、その痕跡は『記』『紀』の固有名詞に残っている。日本神話の中の日向神話や創世神話とポリネシアなどの南島(オーストロネシア)の神話に類縁関係があることは、古くから神話学者によって指摘されてきた。オーストロネシア諸語は後置修飾構造であるが、それらの神話と類縁関係のある日本神話の主人公の名前を分析すれば、その名前には後置修飾構造が見られる。これは、神話がその言語の話者によって日本に伝えられた証拠であろう。古代の日本語の問題を考え、古典を読み解くのに、ポリネシア諸語等の外国語の知識が役に立つという認識は、やがて常識となるのではないか。彦火火出見イワナガヒメ日向神話バナナ型神話釣り針喪失譚