著者
長田 侑 鈴木 恵一郎 中島 玲子 堀地 直也 沢 丞
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.793-797, 2012

症例は92歳,女性.認知症のため老人施設に入所中.糖尿病の指摘歴はなかった.2011年6月9日から食思不振,10日から頻呼吸を認め,当院に救急搬送された.尿ケトン(2+),随時血糖値986 mg/d<i>l</i>,アニオンギャップ開大を伴う代謝性アシドーシスを認め,糖尿病性ケトアシドーシスと診断し,インスリン治療を開始し軽快した.HbA1c 6.4 %(以下HbA1cはNGSP値で表記(Diabetol Int 3(1):8-10, 2012. ))と上昇が乏しく,インスリン分泌能は枯渇しており,膵島関連抗体は陰性で,劇症1型糖尿病の診断基準に合致した.われわれの検索した範囲では,本例は他の病型を含めた1型糖尿病における国内最高齢での発症報告例となる.認知症を有する高齢者の劇症1型糖尿病では,本例のように典型的糖尿病症状を来たさない症例もあり,診療の上で留意すべきと思われた.<br>