著者
山村 淳平 沢田 貴志
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.77, no.10, pp.671-677, 2002-10-15
被引用文献数
4

最近の3年間に港町診療所で経験した超過滞在外国人の結核症例32例を検討した。対象症例の男女比は2.5: 1で, 各年齢層ではほぼ均等に分布していた。国籍では東アジアおよび東南アジア出身者が全体の87%を占めていた。超過滞在のため健康保険に加入することができず, 医療機関を受診する機会は少なく, 受診の遅れが多くみられた。しかし, 一方では無料結核検診での発見例も22%にみられ, 早期発見には結核検診と医療機関への受診促進の重要性が示唆された。肺外結核は全症例の28%にみられ, 高い比率を示していた。治療成績について, 1990年から1998年までの治療中断率は41%ときわめて高かったが, 今回は12%と減少していた。以下の点を積極的に実施していったことが治療中断率の減少につながったと考える。 (1) 結核予防法の申請による経済負担の軽減, (2) 多言語での対応, (3) 治療開始時の結核についての充分な説明, (4) 厳重な経過観察, (5) 国内外の団体との連携および情報交換。
著者
宇野 賀津子 内海 眞 沢田 貴志 岩木 エリーザ 吉崎 和幸
出版者
日本エイズ学会
雑誌
日本エイズ学会誌 = The journal of AIDS research (ISSN:13449478)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.72-81, 2001-05-20
参考文献数
16

目的: 我が国では外国人HIV感染者の比率が高いにも関わらず, 感染者の分布, 言語の多様性等の実態は全く不明で診療体制は十分でない. 今回我が国で初めて全国のHIV拠点病院を対象として外国人診療状況を調査し, 外国人診療体制確立に必要な基礎資料を得ることを目的とした.<BR>方法: 全国のエイズ拠点病院に外国人受診者と外国人HIV感染者の治療状況の調査を行った後, 外国人HIV感染者の診療経験のある病院には, さらに詳しい言語圏別調査を実施した.<BR>結果と考察: 過去5年間にエイズ拠点病院で診察を受けたHIV感染者数はタイ語圏, 英語圏, ポルトガル語圏の順で, タイ語圏ではうち31%が同一病院で継続診療中, 38%が帰国, ポルトガル語圏ではそれぞれ, 50%, 25%, 英語圏では42%, 34%であった. タイ語圏では71%が健康保険をもたず, ポルトガル語圏では80%が保険を取得していた. 健康保険を持たない患者の診療経験のある医者の多くは診療費の支払い困難な事例を経験していた. 従って外国人HIV感染者への対策は健康保険取得状況等患者を取りまく状況, 国別の背景を理解した上での対策が必要である. さらに英語以外の言語, タイ語, ポルトガル語等では通訳は必須であり, 家族や友人が通訳を務めた場合には, 第三者による通訳より混乱が生じるケースが多く, 専門の通訳育成が強く望まれていた.