著者
河 正一 金井 勇人
出版者
埼玉大学日本語教育センター
雑誌
埼玉大学日本語教育センター紀要 (ISSN:21875871)
巻号頁・発行日
no.11, pp.15-27, 2017

本稿では、言葉の変化の過程として現れる敬語表現に焦点を当てて、二重敬語(敬語連結)、敬称、マニュアル敬語、謙譲語、不均衡な表現、さ入れ言葉、(さ)せていただく、慇懃な表現について、それらの表現における規範性と印象を調査した。そして、二つの要因の調査に基づき、敬語表現の変化の段階や揺れの原因とは何かについて、分析を試みた。
著者
金井 勇人 河 正一
出版者
埼玉大学日本語教育センター
雑誌
埼玉大学日本語教育センター紀要 (ISSN:21875871)
巻号頁・発行日
no.10, pp.37-45, 2016-03

本稿は、書き言葉(作文)に現れるア系の指示語について、日本語母語話者による韓国語作文と、韓国語母語話者による日本語作文を資料として、その特徴を分析するものである。ア系の指示語は話し手と聞き手との共有情報をマークするので、基本的には書き言葉には現れない。それは書き手と読み手とが(作文執筆以前から)情報を共有しているということが、原理的にはあり得ないからである。しかし、実際に書かれた作文を調査すると、数は多くないものの、作文においてもア系が現れることが分かる。本稿の分析によると、このタイプのア系は「擬似的な共有知識」を指すものである。また韓国語では基本的に、日本語のソ系(前方照応)とア系(記憶指示)の区別がなく、どちらにも그系が対応する。そのため韓国語母語話者にとっては、「擬似的な共有知識」を前方照応と区別することが難しく、適切な箇所で「擬似的な共有知識」を指すア系を使えない傾向が強い、ということが分かった。