- 著者
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河井 正隆
- 出版者
- The Japan Society of Acupuncture and Moxibustion
- 雑誌
- 全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, no.4, pp.500-506, 2001
鍼灸臨床教育における評価法の一つに、丹澤らの組織的な取り組みで行われたOSCE (Objective Structured Clinical Examination) 研究がある。この研究を発端に、近年、鍼灸教育の場でOSCEの導入が注目されはじめている。<BR>本稿では鍼灸臨床教育における教育方法について検討を行った。そのための、一つの試みとして、本校で平成5年から取り組んでいる実技科目「シミュレーション実習」を取り上げ、カリキュラム開発における教授・学習課程と評価における方法論の一つ「羅生門的モデル」を援用し論及した。併せて学生授業評価から、本授業の有用性の検討を行った。<BR>対象とした「シミュレーション実習」の概要は次の通りである。一般目標には「鍼灸臨床に必要な臨床技能を修得し、鍼灸師としての態度と問題解決能力を養う」をかかげており、教授方略としてロール・プレイングや学生と教員、学生同士の検討会などを導入している。授業では、学生との相互作用のなか、教員の即興的で創造的な教授活動が求められることになる。そこでは予定外の授業展開があり、羅生門的モデルの特徴の一つである「専門家としての教師の力量」が重視される。また、本授業の教員による学生評価は、授業への関わりの度合い (貢献度) や討論会の場面での積極性などの観察・記録と、授業課題に対する小レポートを用いて、一般目標に照らし合わせて総合的に行われている。<BR>学生の授業評価では、授業に「興味がもてた」、授業方法について「有益である」などの肯定的意見が7割以上を占め、羅生門的モデルによる「シミュレーション実習」の有用性が示された。今後、学生の内的変化を加味しながら、さらなる検討を行いたい。