著者
河井 祐介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.I-62_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】 股関節唇損傷患者について問題となるFAI(femoroacetabular impingement以下FAI)では股関節屈曲内旋または屈曲外旋でのインピンジメントによる疼痛が引き起こされる。治療としては保存療法および手術療法が選択される。とくに保存療法では股関節周囲筋の筋力や体幹筋力トレーニング、股関節可動域訓練などが行われている。現在体幹トレーニングについて有用性は示されているが、質量ともにどの程度行えばどの程度の効果が得られるのか述べられている報告はない。今回股関節唇損傷患者においてFront plank(以下プランク)による体幹トレーニングを実施し、その量的評価と股関節スコアを比較しその関係について比較検討した。【方法】 当院を受診し股関節唇損傷と診断された患者12名(男性1名、女性11名、年齢45.3±10.4歳)の体幹筋力評価としてプランクの持続時間を初診時測定し、同時に股関節機能評価としてJOAとharrisのスコアを評価した。またプランク60秒達成時にも同様にJOAとharrisのスコアを評価した。プランクの持続時間とJOAとharrisのスコアについてそれぞれ統計処理としてspearmanの相関分析を行った。またプランクの持続時間が59秒以下の群と60秒可能な群間でJOAとharrisのスコアそれぞれにおいて対応のないT検定を用いて比較した。【結果】 体幹筋力としてのプランクの持続時間と股関節機能評価としてのJOAとharrisのスコアとは正の相関関係が認められた(p<0.05)。またプランクの持続時間が59秒以下の群と60秒可能な群との間にはJOAとharrisのスコアに有意差が認められた。(JOAスコア 0-59秒以下の群:71.6±12.6 60秒可能な群:90.5±11.4 harrisスコア0-59秒以下の群:65.8±12.2 60秒可能な群:82.6±9.3)。つまりプランク持続時間が60秒可能な群の股関節機能評価スコアは59秒以下の群よりも高い傾向にあることが示された。【考察】体幹筋、特に腹筋の機能としては骨盤の後傾作用と安定化機能があり、骨盤後傾によりFAIによる疼痛を回避した姿勢が取れることと、体幹固定作用により十分な下肢筋力の発揮が可能になると考えられる。また、筋持久性に関して、有酸素性にエネルギー代謝が行われる1分以上の持久力が腹筋には必要と考えられる。そのために、プランクを1分保持を達成できる患者の股関節機能評価のスコアが高くなったと考えられる。【結論】股関節唇損傷患者において体幹筋力の改善は股関節機能の改善に寄与する可能性があり、なおかつ量的にはプランク1分以上可能な体幹筋力が有効である可能性がある。【倫理的配慮,説明と同意】京都下鴨病院倫理委員会の承認を得た。