著者
吉井 伸一郎 河内 佑美 吉村 真弥
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DE, データ工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.293, pp.55-60, 2009-11-12

一見ランダムなデータセットの中にも,ある普遍的な特徴が潜む,複雑なシステムが自然界には多数散見されている.何らかのフィードバックループを伴うことにより自己組織化するプロセスは,構成要素の詳細に関わらず生じうる.特に,ネット空間においては,膨大なインタラクションから集合知と呼ばれる創発的なインテリジェンスが形成される事例が数多く知られている.本報告では,こうしたユーザインタラクションを活用した"crowd computing"型のシステムアーキテクチャーについて解説し,実際に,レコメンデーションと呼ばれる商品・情報の推薦サービスへの応用事例を示す.1年半に及ぶ長期運用結果をもとに,著者らが開発した複雑ネットワークのコミュニティ分割手法によるアプローチが優れた特性を有することを示す.
著者
河内 佑美
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

要素間の相互作用によって自ら構造変化を起こし機能を創発する"複雑適応ネットワーク"において,秩序形成や自己組織化の要因となる構成要素や関係性を特徴づける定量的・定性的な内在情報をとらえることで,本研究は,ネットワークの適応・創発に関する秩序形成メカニズムを解明する.特に,その状態が可観測であり事後検証可能なWWWを対象とし,ソフトウェア工学的側面から次世代の知的情報システム構築を目指す.そこでまず,実ネットワークの調査・解析を行うためにWWWから情報取得を行うシステムを構築し,Eコマースシステムや情報発信コミュニケーションシステムから取得したデータを,ユーザの評価機能や相互リンク機能,閲覧履歴等から形成される大規模ネットワークとして調査を行った.特に,大規模な実データとして日本国内のユーザ約12万人のウェブブラウザから収集された1か月間約3憶件のURLアクセスログを用いた.全ユーザのクリックストリームをネットワークとして重ね合わせるとWeb構造と同様に,その構造はスケールフリー特性を持つ複雑ネットワークであり,どの一時点においてもスケールフリーという構造特性は変わらないことがわかった.さらに,時間発展と共にクリックストリームは刻々と変化しているので,その移り変わりを明らかにするために単位時間におけるネットワーク構造の遷移をネットワーク間の類似度を用いて解析し,二次元上に可視化することで,ビヘイビアのダイナミクスを明らかにした.このように,大規模実データを扱うための解析手法の提案と,解析結果から得られたユーザビヘイビアのダイナミクスについて複雑系工学,複雑ネットワークの視点から議論を行い,論文として結実している.
著者
河内 佑美 吉村 真弥 吉井 伸一郎
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.23, 2009

ECサイト内において,サイトの変化としてコンテンツへの誘導を増加させたとき,ユーザの行動変化へ与える影響について,ユーザビヘイビアの大規模な実データを用いて検証する.コンテンツへの誘導としては,ユーザ全体の行動を反映させた内容の複数リンクを表示させる.それらリンクの存在によって得られるユーザ行動をフィードバックし,リンクに繰り返し反映させることで,複数のECサイト内で起こる特徴について示す.