著者
小野田 亮介 河北 拓也 秋田 喜代美
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.403-413, 2018-03-01 (Released:2018-03-16)
参考文献数
21
被引用文献数
2

本研究の目的は,付箋により意見を分類しながら共有すること(付箋分類介入)が議論プロセスに与える影響をシャイネスとの関連に着目して明らかにすることである.大学生32名を対象とし,シャイネス低群と高群のペアを,意見を書きながら共有する対照条件と,付箋を用いて意見を分類しながら共有する実験条件に半数ずつ割り当てた.条件間で発話傾向を比較した結果,対照条件に比べ,実験条件において「主張」や議論の方向性を決める「方針」の発話数が増加し,「つぶやき」の発話数が減少する傾向が認められた.議論プロセスの分析から,実験条件では,付箋を介して思考プロセスを共有していたのに対し,それができない対照条件では,つぶやきによって思考プロセスを共有する傾向にある可能性が示唆された.また,付箋分類介入はシャイネスの高さを補償し,既出意見と異なる新たな意見を提示する「新規アイデア」の発話を促していたことが示された.