著者
薄井 佳子 小野 滋 馬場 勝尚 辻 由貴 河原 仁守 前田 貢作
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.927-932, 2016-06-20 (Released:2016-06-20)
参考文献数
12

【目的】小児気道異物の臨床像は多彩であり,異物吸引のエピソードが明らかでない場合や非典型例では初期診断が難しい.胸部単純X 線(以下CXR)のみによる画像診断は困難なため,CT 検査(以下CT)の有用性について検討した. 【方法】過去7 年間に当科で診療した16 歳未満の気道異物(疑いを含む)の症例を対象として後方視的に解析した. 【結果】12 症例が対象となり,発症時年齢は1 歳5 か月から10 歳4 か月(中央値3 歳5 か月)であった.10 例に対して硬性気管支鏡が行われ,7 例で気道異物(ピーナッツ5 例,小石1 例,円筒形・中空のプラスチックチューブ1 例)が確認されたが,2 例は異物吸引による誤嚥性肺炎,1 例は異常所見なしと診断した.非典型的な臨床経過の2 例は,CXR,CT および入院経過により気道異物なしと判断して気管支鏡を施行しなかった.術前の画像検査は,12 例全てにCXR,10 例にCT が施行されていた.2 例は来院直後に硬性気管支鏡を施行して診断したため,CT を施行しなかった.気管支鏡での異物摘出を要した7 例全てが,術前にCXR およびCT を施行されており,それぞれの画像検査所見を比較した.CXR では3 例に異常所見を認めたが異物を描出できたのは1 例のみで,2 例は過膨張や無気肺など間接的所見のみであった.一方CT では6 例に明瞭な異物描出および間接的な肺野情報を詳細に得られた. 【結論】気道異物を疑う症例では迅速な気管支鏡による確定診断と異物の摘出が基本であるが,近年のCT は数秒の撮影時間で異物の大きさ,部位,間接的な肺野異常など詳細な情報を得られるため,小児気道異物の画像診断におけるCT の有用性は高い.
著者
河原 仁守 尾藤 祐子 會田 洋輔 橘木 由美子 中井 優美子
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.935-941, 2018-06-20 (Released:2018-06-20)
参考文献数
31

症例は11歳,女児.8歳頃より嘔吐を認め,10歳過ぎても食後の嘔吐が持続するため精査された.食道造影検査で造影剤の排泄遅延を認め,高解像度食道内圧検査で下部食道括約筋の積算弛緩圧が63.8 mmHgと高値を示し食道アカラシアと診断された.術前のEckardt scoreは6点であった.食道アカラシアに対する新しい治療方法で,成人領域では良好な治療成績を認めている経口内視鏡的筋層切開術(POEM)を施行した.食道体部後壁5時方向に粘膜下トンネルを作製し,次いで外縦筋は温存して,全長16 cmにわたり選択的に内輪筋の切開を行った.術後は速やかに自覚症状が消失し,Eckardt score 0点,積算弛緩圧17.7 mmHgと改善した.術後1か月間はPPIを投与した.術後3か月経過し,上部消化管内視鏡検査ではLos Angeles分類Aの軽度の食道炎を認めるが,逆流症状はなく2㎏の体重増加が得られ良好に経過している.