- 著者
-
河口 公夫
塚田 全彦
- 出版者
- 国立西洋美術館
- 雑誌
- 基盤研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 1998
1.美術品が曝される温湿度変化の実データ収集国立西洋美術館からの作品貸出の際に、輸送・展示期間の温湿度の連続計測を行い、実際に作品が曝される温湿度変化に関する知見を得た。貸与先での温湿度管理は必ずしも貸す側が求める範囲内で適正に管理されるとは言えないことが明らかとなった。2.温湿度変化に伴い絵画作品におこる変化の計測輸送・展示中に起こる温湿度変化に作品(特に紙を支持体とするもの)が曝された場合に生じる、作品の形状、水分量の変化について、基礎実験データの収集を行った。その結果、一般的な傾向として相対湿度の変化に合わせて速やかに紙試料の形状、'水分量は変化し、相対湿度が高くなると試料の変形、含水率は大きくなり、相対湿度の変化幅が大きい方が変形、水分量の変化幅も大きいことがわかった。また、これらの変化の傾向に高い規則性が見られるもの、場所によるバラツキが大きいもの、等、相対湿度変化の影響が紙の種類によって異なることがわかった。3.マイクロクライメイトボックスの素材と構造の検討ボックスの素材と構造についていくつかのパターンを製作して性能の評価実験を行った。その結果、マイクロクライメイトボックスの特徴として、熱伝導率が低い素材を用いても、薄い材料を使う限り、外部の温度変化が内部に伝わるのを緩衝する効果はあまり期待できないが、相対湿度変化についてはボックス外部の変化が比較的早い場合には内部の環境を十分安定化できることがわかった。その度合いは素材により多少の差はあるものの、密閉を確保すれば大きな違いはないことがわかった。しかし長期間では外部と平衡に向かう変化が緩やかに生じるため、注意を要することがわかった。4.マイクロクライメイトボックスの基本構造の決定と評価上記よりボックスの基本構造を決定するとともに、作品の寸法・状態により個々に仕様を検討する必要があることを確認した。