著者
河口 弘雄
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.59, pp.107-110, 2009-06-26

フラットで平等な組織を持つ非営利組織の経営管理を如何にすべきかに付き、体系的理論が論じ切れていない現状がある。それは広く研究されている営利組織の経営とは大きく異なる面が多く、この問題を独自に取上げるのが困難である、と云う状況がある。しかし経営学史を辿って行くと、非営利組織の経営管理に有力な理論を提供している先駆者がいる事に気付く。それが20世紀初頭に活躍した、NPOの実務家であると同時に企業のコンサルタントを勤めたメアリー・フォレットである。彼女の理論は広範に及ぶがその中でもリーダーの権限とは経営組織ではどの様にあるべきか、命令はどの様に発せられるべきか、第一線の組織人の同意と参加が経営の意思決定に如何に大切か、と云った点を経営の実務家から見て論じている。すなわちここでは難解な理論が展開されているのではなく、組織人が如何に職務に取り組めば良いのかが理解できる。権限と命令とはコインの裏と表との関係にあるが、フォレットの理論はフラットで平等な組織にこそふさわしく、上位者権限でなく共有的権限を有効と見る。同時に命令は否定され、同意が置き換わる。この様な要素が同意と参加のリーダーシップを形成しており、上下関係でなく如何に経営の状況を適切に理解しるか、によりリーダーが決められるとフォレットは見る。彼女はこれらの理論を企業に適用しようと、大西洋を行き来しコンサルタント活動に励んだ。しかし、フォレットの経営学者としてのルーツは20世紀始めにボストン郊外で20年間近く非営利活動に励んだ点にある、と見て不自然では無いであろう。この様な角度からフォレットの共有的命令とモチベーション重視理論を非営利組織に適用し、更なる発展に繋げて行けたらと希望したい。