- 著者
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河島 思朗
- 出版者
- 首都大学東京
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2005
本研究は、オウィディウス『変身物語』における詩的技法を詳細に研究することを主眼とする。とりわけ、物語相互の連関に着目して、作品の解釈を試みる。『変身物語』に含まれる多彩な物語群は、個々に独立する物語でありながらも、互いに連関を有している。この理解については先行研究も広く認めるものであるが、個々の物語の理解に影響を与えるような物語同士の内的な連関については、具体的に議論され得る余地はなお多く残されている。今年度は、第一に物語相互の連関について、第4巻55-388行、第10巻86-219行、第15巻60-487行を考察し、新たな理解を見出した。さらに『変身物語』に影響を与えた他のラテン文学作品との関連から考察した。とりわけ、ウェルギリウスの『牧歌』、『農耕詩』、『アエネーイス』の分析を行ない、『変身物語』の文学史的位置づけを考察するとともに、作品の詩的技法上の特質を研究した。また、『変身物語』の古代ローマにおける社会的・文化的意義、また作品の神話学的な意味についての研究を推し進めることによって、その詩的技法の効果を分析した。以上の研究成果は、2009年の都立大学哲学会において、「アリスタエウスの物語の意義-ウェルギリウス『農耕詩』第四巻」として口頭発表する予定であり、また「ミニュアースの娘たちが語る物語群-オウィディウス『変身物語』4.55-388に描かれる変身の意味-」を2008年中に『ペディラヴィウム』に、"Personal Pronouns in Ovidius Metamorphoses10.86-219"を2009年にSeiyo-kotengakuに、それぞれ論文として投稿する予定である。またこれらの研究成果によって、課程博士論文提出予備資格を取得済みであり、さらにこの成果を平成20年度首都大学東京オープンユニバーシティーにおいて一般向け講義として発表することが決定している。