著者
浅田 あゆみ 鈴木 杏 河本 実季 大嶋 廉之 宮永 佳代 長澤 一樹
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

【目的】炎症性腸疾患(IBD)患者はうつ病の有病率が高いが、それは腸管における炎症に起因すると考えられているものの、その詳細は不明である。そこで本研究では、unpredictable chronic mild stress(UCMS)などに対して低感受性のマウスに対してIBDを発症させたときのそのストレス感受性の変化について、うつ様行動の誘発、海馬での炎症関連因子の発現変動を指標として検討した。【方法】IBDは、C57BL/6JCrl系雄性マウス(7週齢)に対し1w/v% デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)水溶液を10日間自由飲水させることにより発症させ、その評価は糞便の状態と体重変化に基づいたdisease activity index (DAI) 並びに大腸における炎症性サイトカインの発現により行った。このDSS負荷終了後、マウスに対してUCMS(拘束、強制水泳、明暗サイクルの変動など)を21日間負荷し、そのうつ様所見は強制水泳試験などにより評価した。大腸及び海馬における炎症性サイトカインなどの発現量はreal-time PCRにより解析した。【結果・考察】DSSを摂取させたマウスにおいて、DAI並びに大腸でのIL-1β及びTNF-αの発現の増大を示すIBDの誘発が確認されたが、うつ様所見は認められなかった。これらIBDを発症したマウスに対するUCMSの負荷は、無処置マウスに対するその負荷の場合とは異なり、強制水泳試験において無動時間が延長し、海馬でのIL-1β及びTNF-α発現が増大傾向にあったことから、うつ様所見の誘発が認められた。このうつ様所見を示したマウスのDAIは、DSS負荷直後より低下していたものの対照群と比較して有意に高く、また大腸での炎症性サイトカインの発現量は増大傾向にあった。以上のことから、大腸における炎症の発症がマウスのUCMSに対する感受性を高め、うつ様行動を誘発することが示された。