著者
上田 一夫 三野 たまき 河村 まち子 間壁 治子
出版者
共立女子大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1993

従来より、衣服の着心地の定量化が望まれていた。我々は、本研究の中で新しい衣服圧計測システム(液圧平衡法)を確立した。このシステムで計測した衣服圧は着心地感とよく対応することがわかった。そこで、この衣服圧と皮下脂肪、体表の粘弾性、官能評価との関連を調べた。超音波診断装置を用いて腹部の皮下脂肪の厚さを調べたところ、ウエストベルトを装着すると、ベルト下では皮下脂肪の厚さが減り、ベルトの上下の体部位では厚くなった。これらの結果から、ベルト圧に皮下脂肪の厚さが寄与する割合を求めると、約30%であった。一方ベルト圧に体表の応力が寄与する割合は約65%であった。履き心地の良い紳士の靴下圧は、口ゴム部で10mmHg、足首では5〜10mmHgであった。好まれる成人婦人用ハイソックス圧は、静立時の下腿において5〜10mmHgであった。同一衣服素材を用いて作製したウエストベルトとウエストニッパーを着用した場合、ウエストライン上に発生した圧は、前者より後者を装着した時の方が高かった。浴衣を着た時、おじぎに伴う着くずれは、主として胸元、帯の上端、おはしょりの下端および右脇線上の4部位に生じた。静立位で1部位当たり20mmHg以上の圧が生じるように腰紐を結んだ場合、圧値が高くなる程ずれ量が増した。おじぎに伴うおはしょりのずれ量と圧の変化率の間には、ベキ法則が成り立つことが分かった。浴衣を着慣れる(50回着用する)と、腹部に発生する浴衣圧の値は、どの被験者でも着用回数の増加に伴って、7mmHg/部位に収束した。衣服による圧迫がいかに自律神経系の機能に影響を与えるかを考察した。例えば、種々の強度の上腕圧迫の影響を手掌の皮膚温応答を指標として調べたところ、むしろ弱い圧迫刺激(8mmHg程度)によって皮膚温が顕著に下降することが分かった。