著者
桑原 達朗 今中 翔一 河村 剛至 渡部 多真紀 黒木 裕治 河野 将行 長尾 剛至 三宅 康史 坂本 哲也 安野 伸浩
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.876-880, 2022-10-31 (Released:2022-10-31)
参考文献数
6

エチレングリコール(ethylene glycol,以下EGと略す)中毒は,有毒代謝物による代謝性アシドーシスなどにより死に至ることがあり,迅速な代謝阻害薬ホメピゾールの投与や血液透析が有効である。患者は自殺目的に大量のEG を服用し,救急要請となった。推定内服時間から搬送まで約7時間,来院時の血液検査で代謝性アシドーシス(pH 7.262),アニオンギャップ上昇(24.1mEq/L)を認めた。救急隊の情報で,搬送前に薬剤師がホメピゾールを加温融解し,来院39分後にホメピゾール投与,114分後に血液透析を開始した。その結果,重度のアシドーシスの進行や乏尿を認めることなく,入院10日目に退院となった。今回の症例では,救急隊の初動から薬剤師の介入により早期ホメピゾール投与による代謝物生成抑制,CEによる透析管理,医師による病態の評価と治療方針決定など,多職種連携による迅速な治療介入が,中毒治療に奏功したことを示す。