- 著者
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土門 英司
Min San Thein
竹井 恵美子
長田 俊樹
河瀬 眞琴
- 出版者
- 国立研究開発法人農業生物資源研究所
- 雑誌
- 植物遺伝資源探索導入調査報告書 = Annual report on exploration and introduction of plant genetic resources (ISSN:24347485)
- 巻号頁・発行日
- no.31, pp.343-365, 2016-01
本報は2014年11月にャンマーのザガイン地方域,とくにナガ族居住山地を対象に実施した植物遺伝資源に関する共同現地調査隊の報告である.今までに行なってきた東南アジアの山村での現地調査や観察の結果,他地域との交流が活発ではなく多様な在来作物・有用植物遺伝資源の収集が期待されるナガ族居住地域を対象に選んだ.本調査隊はカムティ郡区およびラヘー郡区のナガ族山村を訪問し,GPS情報,方名,農作業法,調理法等の利用法とともに植物遺伝資源を収集した.山地の傾斜地では焼畑が共通して営まれ,主要食用作物であるイネとともに,モロコシ,ハトムギ,トウモロコシ,シコクビエ,フジマメ,タケアズキ,ダイズ,キャッサバ,シャロット,トマト,エゴマ,トウガラシ,ローゼル,ニガウリ,ササゲ,ヘチマ,カボチャ,サトイモ類,ヤマイモ類,背の高いアカザ類,カミメボウキ,ナギナタコウジュ類,カラシナ,バナナ,ショウガ等が栽培されていた.現地調査隊はイネ29点,トウモロコシ6点,ササゲ5点,トウガラシ類5点,サンショウ類4点,インゲンマメ4点,ハトムギ3点,アワ3点,タケアズキ3点,ダイズ3点,アカザ類3点,エゴマ3点他,計102点を収集し,これらはミャンマーと日本の両国のジーンバンクで保存されることとなった.調査した作物の方名は多様で,特にラヘー郡区で顕著であった.また,ザガイン地方域の山地の焼畑で栽培される作物の種類はカチン州,ラオス中北部,インド・ナガランド州の山地の焼畑で栽培されるものとの共通性が高く,これらの地域の人々が「東南アジア農耕文化基本複合」を共有していることが示唆された.ザガイン地方域の山地には多様な作物の地方品種が残存している一方,現在急速に進んでいる社会経済的な変革によって農業生物多様性が滅失すると考えられる.この地域の作物遺伝資源を可及的速やかに収集し研究すべきであると結論した.