著者
谷山 鉄郎 河田 いこい
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会東海支部研究発表梗概
巻号頁・発行日
no.72, pp.33-39, 1975-05-01

近年、セメント工場排煙による公害が大きな社会問題となっている。本間(1973)は東京都日の出村におけるカドミウム汚染が同村の日本セメント工場の排煙に基因していることをつきとめた。また、板野ら(1974)は三重県員弁郡藤原町の小野田セメント藤原工場の排煙によって、同工場周辺の農地が汚染され、この汚染源が小野田セメト藤原工場であることを明らかにした。その後我が国各地でセメント工場による重金属による汚染が表面化している。セメント工場排煙中には重金属(Cd、Zn、Pb、Cu)、いおう酸化物(SO_2、H_2SO_4)、窒素酸化物(NO、NO_2)および粉じん等が含まれている。これらは、それぞれ単独でも農作物および自然植生植物の生長を阻害し、作物の生産を減退させることが明らかにされている。本実験は小野田セメント藤原工場の排煙に基因した藤原町の重金属等によって汚染された農地(畑土)と非汚染土壌における生長および乾物生産の比較を行ない、どの程度の生育阻害および乾物生産の減退がみられるものかを明らかにしたものである。また、本実験の結果、汚染土における生育.生産の減退が明らかになったので、藤原町における玄米収量が歴史的に小野田セメントのセメント年間生産高と何らかの関係が成立するものと考え、三重県と藤原町の10a当たり玄米収量の比較を行ない、セメント生産高との関係を検討したものである。また1973年と1974年に同工場周辺の汚染農地の水稲の坪刈り調査を行なった。