- 著者
-
河田 真由美
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2009
(1)ヒト大腸癌臨床検体を用いた研究大腸癌患者の血清および病理検体のmRNA、蛋白発現を解析したところ、癌部腸上皮細胞においてCHI3L1/YKL-40が高発現していることが確認され、その発現が強い検体ほど血管新生およびマクロファージの浸潤が強い傾向にあった。(2)ヒト大腸癌細胞株を用いた研究ヒト大腸癌細胞株SW480とヒト血管内皮細胞HUVEC、ヒトマクロファージ細胞THP-1を用いて、Boyden chamber法とtube fromation assayにて遊走能と血管新生能を検討した。SW480にCHI3L1を強制発現したものではHUVECとTHP-1の遊走能およびHUVECの血管新生能が著明に亢進し、ノックダウンしたものではそれらが有意に低下した。癌微小環境に影響をおよぼしているケモカインに注目し、抗体アレイ法で調べたところIL-8(CXCL8)とMCP-1(CCL2)を介していることが確認された。(3)マウスのxenograft modelを用いた研究ヌードマウスを用いて空ベクターおよびCHI3L1/YKL-40発現ベクターを遺伝子導入したヒト大腸癌細胞株HCT116を皮下接種した。4週間経過観察したところCHI3L1/YKL-40を発現した腫瘍はコントロールに比べて約3.5倍の大きさになっていた。また腫瘍を標本にして免疫染色したところCHI3L1/YKL-40を発現した腫瘍では有意に血管密度およびマクロファージの浸潤数が多かった。これらの結果はヒト大腸癌検体を用いた実験結果とヒト大腸癌細胞株を用いた実験結果とも合致しており、CHI3L1/YKL-40が腫瘍の増大に関与するともに間質細胞である血管内皮細胞やマクロファージにも影響を及ぼしているという結論を導いた。