著者
田中 靖子 中村 仁美 河西 立雄 三橋 俊雄
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.2_25-2_30, 2015

京都府京丹後市袖志地区の調査により、採藻業の現状と、シミズ、カワ、イケ、イネの4つの水資源のあり方から、それぞれの特徴、また補完関係を読み取り、暮らしを支えた水と人との関係について、以下の5 つの特性を抽出した。<br>1)海の採藻業における「適期」「平等性」としての「山の口開け」、棚田・イネの掃除や管理、カワの水場での洗い物の規範など、コモンズを支えた水に関わる共同体的意識、2)イケやシミズの水供給システム、農業用水路としてのイネなど、水資源を最大限に利用し自然と共生した水利用の技、3)採藻業で採集される海藻類の処理・製造工程において必要となる大量の水とその利用を支えた智恵と工夫、4)豆腐づくりや酒づくりに欠かせない西川の水、飲料水や果物などを冷やす水として親しまれた「カンダのイケ」など、食文化を支えたカワやシミズ、5)棚田と共に袖志における水場の原風景を醸し出し人々の心をとらえてきた文化的景観としての水。