著者
河重 俊一郎
出版者
日本徒手理学療法学会
雑誌
徒手理学療法 (ISSN:13469223)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.55-59, 2019 (Released:2019-10-23)
参考文献数
8

〔緒言〕局所性ジストニアに対する理学療法の方法および有効性について,一定の見解は得られていない。本報告は手指の局所性ジストニアに由来する症候に対して徒手療法が奏功した一例であり,その経験に加え局所性ジストニアの診断に至るまで時間を要した反省をあわせて報告するものである。〔症例〕40 歳代女性,把握動作時に母指・示指の屈曲に抑制が効かず,意図せず物を強く握りしめてしまうことを訴えて来院した。〔評価および介入〕特筆した理学所見がなく,病態解釈・治療に難渋していたが,ある時発生した疼痛に対し,大菱形骨のマニピュレーションを行ったところ不随意な手指屈曲動作の著明な改善が得られた。〔結論〕骨偏位や可動不全といった筋骨格系の異常が,局所性ジストニアに由来する症候を修飾する可能性が示唆された。