著者
杉本 敬子 砂川 洋子 河野 伸造
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.144-153, 2005

本研究の目的は, 中高年女性の主観的睡眠評価とそれに影響する関連要因を明らかにすることである.住民健診において調査協力の得られた342名の女性を対象として, ピッツバーグ睡眠質問票(The Pittsburgh Sleep Quality Index : PSQI)を含む質問紙による調査を行った.その中で, 回答が有効であった292名(有効回答率: 85.4%, 年齢: 30〜80(平均51.2)歳)を, Pre更年期群(40歳未満), 閉経前更年期群(閉経前で40歳以上60歳未満), 閉経中更年期群(閉経中で40歳以上60歳未満), 閉経後更年期群(閉経後で40歳以上60歳未満), Post更年期群(60歳以上65歳未満), 老年期群(65歳以上)の6群に分類し, 群間による比較を行ない以下の結果を得た.老年期群は, 最も要介護家族を抱えていたが, 昼寝を習慣としていた.心身の自覚症状総合得点は閉経中更年期群が最も高かった.睡眠の量的面において, 「実睡眠時間」は, 閉経後更年期群(平均6.0時間), 閉経中更年期群(平均6.2時間)の順に短く, PSQI要素の「睡眠時間」においても閉経後更年期群(p<.01)と閉経中更年期群(p<.05)が, 老年期群とPre更年期群より, 有意に得点が高かった.一方, 睡眠の質的面において, PSQI総合得点は閉経中更年期群・閉経後更年期群の順に高く, PSQI要素得点は, 「睡眠の質」「入眠時間」「睡眠効率」「睡眠困難」「日中覚醒困難」においては閉経中更年期群が, 「眠剤の使用」においては老年期群が, 最も高かった.さらに, 睡眠評価に関連する要因においては, 精神神経系症状を中心とする「心身の自覚症状」が, 最も強い関連要因として抽出された.これらの結果は, 更年期女性が, 量と質の両面において, 睡眠の悪化を強く自覚することと, 中高年女性の心身の自覚症状が主観的な睡眠評価と強く関連することを示唆する.