著者
河野 勝泰 富澤 一郎
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

この研究では、地上(電気通信大学及び附属菅平宇宙電波研究所)での、日、季節変化による自然及び宇宙放射線量の観測、観測データ相当の地上放射線照射によるLSIなどデバイスの損傷実験と評価、宇宙放射線検出デバイスの開発と評価を行ない、耐放射線性能の高いデバイスの開発を目的としている。このような地上の放射線や宇宙線を利用して、引き下げ法で自作したシンチレータ用結晶の比較評価を行い、耐高エネルギー宇宙線用シンチレータの開発の基礎をつくることを目指した。既存のMCA(マルチチャネル放射線分析器)と、別の検出プローブを用いて、当研究室で自作したテストシンチレーター結晶(CaF_2:Eu及びGd、濃度0.2-9.85mol%)を取り付けて観測し、スペクトルの検出能力、分解能(線幅による評価)を、標準のNaI:Tlシンチレーションプローブの測定結果と比較した。実際には、昨年度KMgF_3を用いて検出を試みていたシンチレーション発光がプローブの低感度領域であったことを教訓に,希土類EuとGdをドープして,その広幅のf-d発光を長波長領域にシフトさせることを目指した。結果は、作成した全ての単結晶の発光バンドが十分プローブの分光感度ピーク(420nm)に近い領域に入り、標準γ線源(^<137>Cs)とMCAによる放射線計数スペクトルから正確に評価が可能となった。コバルト60γ線源((財)産業創造研を利用)を用いた光子数測定実験から、Eu(0.2mol%)の結晶で61,163photons/cm^3の高い値を得た。得られた関連の成果は、宇宙開発事業団(NASDA)及び日本原子力研究所(JAERI)が後援する"第5回宇宙用半導体デバイスに及ぼす放射線効果国際ワークショップ"(於 高崎)及び"半導体の放射線照射効果"研究会(豊田工大)において発表し多数の宇宙放射線研究者の興味をひいた。