著者
河野 卓成 メヒロートラ サンディア 横田 明穂 蘆田 弘樹
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.160, 2011

生物進化においてカルビンサイクルはラン藻で完成したと考えられてきた。カルビンサイクルでは11酵素が働いているが、RuBisCO、phosphoribulokinase (PRK)はこの回路特異的酵素である。原始ラン藻<I>Gloeobacter violaceus</I>は、典型的なラン藻PRK遺伝子<I>prk1</I>に加え、2つのPRKホモログ遺伝子<I>prk2</I>と<I>3</I>を有している。大腸菌リコンビナントタンパク質を用いた解析の結果、PRK1は200 &mu;mol/min/mg (<I>K</I>m<SUB>(Ru5P)</SUB> = 0.28 mM)、PRK3は23.5 &mu;mol/min/mg (<I>K</I>m<SUB>(Ru5P)</SUB> = 5 mM)のPRK活性を示したが、PRK2は全く活性を示さなかった。系統樹においてPRK3は<I>Methanospirillum hungatei</I>などのメタン産生古細菌PRKホモログと共にPRK1と独立したクレードを形成した。解析の結果、<I>M. hungatei</I> PRKは29.3 &mu;mol/min/mg (<I>K</I>m<SUB>(Ru5P)</SUB> = 0.21 mM)のPRK活性を示したことから、古細菌型PRKの存在が明らかになった。これまで古細菌においてカルビンサイクルの存在は報告されていないが、本研究結果と<I>M. hungatei</I>がRuBisCOホモログを有することから、この古細菌で原始的なカルビンサイクルが機能していると予想された。