著者
日原 由香子 成川 礼 蓮沼 誠久 増川 一 朝山 宗彦 蘆田 弘樹 天尾 豊 新井 宗仁 粟井 光一郎 得平 茂樹 小山内 崇 鞆 達也
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.88-97, 2017

<p>化石燃料に代わるエネルギー源の確保が課題とされる昨今,光合成効率が高いシアノバクテリアや藻類を用いた燃料生産は,食糧生産と競合せず,カーボンニュートラルである点で注目を集めている.特にシアノバクテリアは,ゲノムや細胞の構造が単純で遺伝子操作が容易,増殖が速い,光合成能が高いなど,燃料生産ホストとして有利な性質を備えている.本稿では,多様性に富むシアノバクテリアのさまざまな性質を活かして,燃料生産技術の開発に取り組んだ最新の成果について解説する.</p>
著者
河野 卓成 メヒロートラ サンディア 横田 明穂 蘆田 弘樹
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.160, 2011

生物進化においてカルビンサイクルはラン藻で完成したと考えられてきた。カルビンサイクルでは11酵素が働いているが、RuBisCO、phosphoribulokinase (PRK)はこの回路特異的酵素である。原始ラン藻<I>Gloeobacter violaceus</I>は、典型的なラン藻PRK遺伝子<I>prk1</I>に加え、2つのPRKホモログ遺伝子<I>prk2</I>と<I>3</I>を有している。大腸菌リコンビナントタンパク質を用いた解析の結果、PRK1は200 &mu;mol/min/mg (<I>K</I>m<SUB>(Ru5P)</SUB> = 0.28 mM)、PRK3は23.5 &mu;mol/min/mg (<I>K</I>m<SUB>(Ru5P)</SUB> = 5 mM)のPRK活性を示したが、PRK2は全く活性を示さなかった。系統樹においてPRK3は<I>Methanospirillum hungatei</I>などのメタン産生古細菌PRKホモログと共にPRK1と独立したクレードを形成した。解析の結果、<I>M. hungatei</I> PRKは29.3 &mu;mol/min/mg (<I>K</I>m<SUB>(Ru5P)</SUB> = 0.21 mM)のPRK活性を示したことから、古細菌型PRKの存在が明らかになった。これまで古細菌においてカルビンサイクルの存在は報告されていないが、本研究結果と<I>M. hungatei</I>がRuBisCOホモログを有することから、この古細菌で原始的なカルビンサイクルが機能していると予想された。