著者
河野 孝太郎 江澤 元
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

研究初年次となる平成20年度は、南米チリ北部のアンデス山脈中にある極めて乾燥した高地(アタカマ高地、標高4860m地点)に設置した大口径(直径10m)の最新鋭サブミリ波望遠鏡ASTE(国立天文台、東京大学、他国内およびチリの大学が共同して運営)に、マサチューセッツ大学等のグループと協力して、ボロメーターカメラAzTEC(画素数144、ASTE望遠鏡への搭載時の視野約8分角、角分解能約30秒角)を搭載する。そして、かつてない広域かつ深い1.1mm帯撮像サーベイ観測を行い、初期宇宙にある形成されたばかりの若い銀河を新たに数100個規模で発見することを目標とした。AzTECカメラを用いたASTE望遠鏡での観測は極めて順調に始まった。今年は特に現地の天候が例年にも増して安定しており、極めてよい大気条件の下、非常に効率的に高品位の高赤方偏移天体探査が進行している。現在までに、既に10個以上の天域で、150平方分角あるいはそれ以上の広さでの、深さ1mJy(1σ)以下という感度を持った観測が進んでいる。観測はもちろん、データ処理はまだ途上であるが、それぞれの天域における予備的な解析から発見されつつある天体を合計すると、新たに発見された天体は既に100個程度に達していると思われる。他の波長のデータとの比較から、これらは多くが赤方偏移1以上の初期宇宙に存在することが示唆されている。従来の可視光・赤外線では見出せなかった、初期宇宙にある若く質量の大きい星形成銀河について、新たな展開を得ることができると大いに期待される成果であると言える。