- 著者
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河野 穂夏
山田 一憲
中道 正之
- 出版者
- 日本霊長類学会
- 雑誌
- 霊長類研究 Supplement 第30回日本霊長類学会大会
- 巻号頁・発行日
- pp.60-61, 2014 (Released:2014-08-28)
神戸市立王子動物園で飼育されているアビシニアコロブス(Colobus guereza)集団を2011年12月から2012年10月まで11カ月間観察し、2頭の成体メスによる3回の出産を記録した。アビシニアコロブスの妊娠期間は約160日であるが、出産直前になっても妊娠メスの腹部が大きく膨らむことはなく、出産前に外見で妊娠を判断することは困難であった。また、アビシニアコロブスの繁殖に季節性はないと言われており、発情時に特有の音声を発したり、性皮が明らかに腫脹することもないため、観察からメスの繁殖状態を推察することは難しい。本研究では、出産日から逆算し、妊娠状態とメスの社会行動の関連を検討した。妊娠していないと推察される期間には83%であった成体メスと集団内の他個体との接触率は、出産の2カ月前には40%まで減少した。集団内のどの他個体とも接触および近接していない割合は、妊娠していないと推察される期間には4%であったが、出産の2カ月前には41%まで増加した。これらの傾向は、対象となった3回の出産いずれにおいても確認された。これらの結果から、アビシニアコロブスのメスは妊娠、出産といった繁殖状態によって、集団内の他個体との関係性を変化させている可能性が示唆された。さらに、成体メスの行動を観察することによって、外見からだけでは判断できないメスの妊娠を推察できる可能性が示された。観察期間に、集団には4頭から7頭の未成体が存在した。誕生時期が異なる5頭の子の行動を月齢ごとに解析すると。子が母親に抱かれている割合は加齢に伴って顕著な減少を示したが、子ども同士での社会的遊びの生起率は加齢に伴う増減を示さず。5頭の子で観察月ごとに似た傾向を示した。社会的遊びは子ども同士で同期していること、社会的遊びの生起率は少なくとも28カ月齢までの子の発達段階を示す指標とはならないと考えられた。