著者
河野 通仁 渥美 達也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.111, no.3, pp.625-632, 2022-03-10 (Released:2023-03-10)
参考文献数
10

全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)は自己抗体の産生,免疫複合体の沈着により腎臓,脳等多彩な臓器を傷害する代表的な自己免疫性疾患のひとつである.グルココルチコイドや免疫抑制薬の使用により生命予後は改善されたが,グルココルチコイドの副作用によりSLE患者の生活の質が低下することが問題視されている.2019年,我が国でSLE診療ガイドラインが作成され,SLEの治療目標は,健常者と何もかわらない社会的活動を行える状態を維持すること,つまり「社会的寛解の維持」と定義された.近年,シクロホスファミドに加え,ヒドロキシクロロキン,ミコフェノール酸モフェチル,ベリムマブ等の新たな薬剤が使用できるようになった.これに伴いSLEの疾患活動性を低下させるだけでなく,グルココルチコイドのさらなる減量,中止が可能となってきている.新たな薬剤の開発も進んでおり,SLE患者の予後ならびに生活の質のさらなる改善が期待される.