著者
加藤 将 渥美 達也 小池 隆夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.10, pp.2401-2406, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
9

全身性エリテマトーデスの治療は従来からステロイド薬による非特異的な治療が中心であったが,近年,免疫抑制薬や生物学的製剤を用い,効果的で副作用の少ない治療が試みられている.全身性エリテマトーデスの関節炎の特徴は「非破壊性関節炎」と表現され,関節リウマチの「破壊性関節炎」とは多くの点で対照的である.このような対照的な病態を理解することは関節炎全般の診療をより深いものにすると考えられる.
著者
坊垣 暁之 渥美 達也
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.125-132, 2014 (Released:2014-06-30)
参考文献数
78
被引用文献数
3 3

細胞死は,発生,分化,炎症,自己免疫,発癌等,さまざまな現象に関わっている.細胞死の分子レベルの研究は,アポトーシスを中心に行われてきたが,アポトーシス以外にもプログラムされたさまざまな細胞死が哺乳類細胞で認められる.非アポトーシス型細胞死機構の中でオートファジーとネクロプトーシスにおいて分子機構が解明されつつあり注目される.オートファジーは,酵母から哺乳類に至るまで進化的に保存された機構であり生体の恒常性維持に必要である.オートファジーとヒト疾患との関係が示されており,本稿では,オートファジーの自己免疫疾患における位置づけについて概説した.
著者
大場 知穂 竹内 淳 鈴木 瞭 上杉 正人 加藤 祐司 渥美 達也 三好 秀明
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.27-35, 2021-01-30 (Released:2021-01-30)
参考文献数
33

今回我々は内科クリニックで無散瞳眼底写真撮影と光干渉断層計を施行し,クラウドを用いて眼科医が読影するシステムを導入し,糖尿病初診患者と眼科受診を促しても受診しない再診患者に対して実施した.患者背景は全277例,初診122例,再診155例,罹患期間7.5±8.2年,HbA1c 8.0±2.1 %.全症例の35.7 %,初診29.0 %,再診45.1 %で所見を指摘され,網膜症9.0 %,黄斑浮腫3.6 %,緑内障20.2 %,白内障3.2 %で指摘された.所見を指摘された再診患者のうち90 %以上がその後眼科を受診した.このシステムの利点として(1)糖尿病診断時に急を要する眼科疾患を速やかに発見し眼科に紹介できる点,(2)眼科受診指示に従わない患者の眼底を評価し,受診行動を惹起できる点などが挙げられる.今後このような内科と眼科の連携により,眼科受診率の向上と糖尿病関連眼疾患の早期発見に繋がることを期待する.
著者
河野 通仁 渥美 達也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.111, no.3, pp.625-632, 2022-03-10 (Released:2023-03-10)
参考文献数
10

全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)は自己抗体の産生,免疫複合体の沈着により腎臓,脳等多彩な臓器を傷害する代表的な自己免疫性疾患のひとつである.グルココルチコイドや免疫抑制薬の使用により生命予後は改善されたが,グルココルチコイドの副作用によりSLE患者の生活の質が低下することが問題視されている.2019年,我が国でSLE診療ガイドラインが作成され,SLEの治療目標は,健常者と何もかわらない社会的活動を行える状態を維持すること,つまり「社会的寛解の維持」と定義された.近年,シクロホスファミドに加え,ヒドロキシクロロキン,ミコフェノール酸モフェチル,ベリムマブ等の新たな薬剤が使用できるようになった.これに伴いSLEの疾患活動性を低下させるだけでなく,グルココルチコイドのさらなる減量,中止が可能となってきている.新たな薬剤の開発も進んでおり,SLE患者の予後ならびに生活の質のさらなる改善が期待される.

1 0 0 0 OA 膠原病関連TMA

著者
菅原 恵理 渥美 達也
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.720-724, 2014 (Released:2014-12-17)
参考文献数
17
被引用文献数
1

要約 : 血栓性微小血管障害症(TMA)は,先天性と後天性に分けられ,後天性には特発性と,基礎疾患等に続発する二次性がある.二次性TMA の基礎疾患として最も多いのが膠原病である.膠原病患者で血小板減少,溶血性貧血を認めた場合には本症を疑うべきであり,末梢血塗抹標本での破砕赤血球の存在が診断に重要である.von Willebrand 因子の切断酵素であるADAMTS13の活性低下が診断の一助になるが,活性低下を認めない例も多い.定型的TTP では治療は血漿交換療法が第一選択であるが,膠原病関連TMA ではインヒビターの除去に加えて基礎疾患の疾患活動性の低下を目的としてステロイド治療や免疫抑制療法が必要なことも多い.膠原病関連TMA は特発性TMAと比較して,予後不良であり早期の診断と治療開始が極めて重要である.
著者
谷村 憲司 蝦名 康彦 渥美 達也 山田 秀人 荒瀬 尚
出版者
日本生殖免疫学会
雑誌
Reproductive Immunology and Biology (ISSN:1881607X)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.24-32, 2016 (Released:2018-08-05)
参考文献数
10

抗リン脂質抗体症候群(APS)は、抗リン脂質抗体(aPL)を有する患者が血栓症や妊娠合併症を呈する症候群である。APSでは、他の自己免疫疾患と同様に疾患感受性の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスII(HLA-II)アレルが存在することが知られているが、その機序は不明である。また、健常人の血清中にも存在するβ2-グリコプロテインI(β2GPI)が、何故、APS患者におけるaPLの主要抗原となり得るのか? についても不明である。 一方で、荒瀬らは、関節リウマチ(RA)患者の血清中にHLA-II分子と変性IgGの複合体に対する自己抗体が存在し、それがRAの病態に関連していることを報告した。今回、ミスフォールドβ2GPIとHLA-II複合体がAPSの病態と関連するかを調べた。 β2GPIのみを293T細胞に遺伝子導入しても細胞表面にβGPI は発現しなかったが、β2GPI とHLA-IIの両方を遺伝子導入するとβ2GPI が細胞表面に発現することを確認した。さらに、免疫沈降によって、細胞表面でHLA-II分子とβ2GPIが複合体を形成していることを明らかにした。また、HLA-IIと共沈降したβ2GPI の分子量からHLA-IIに結合したβ2GPIはペプチドではなく、full-lengthのβ2GPIであることが分かった。次に、ヒト抗カルジオリピン・モノクローナル抗体(EY2C9)と患者血清中の自己抗体がリン脂質非存在下で、APS感受性アリルのHLA-II(HLA-DR7)とβ2GPIの複合体を認識することが分かった。APS患者の83.3%(100/120人)において、β2GPI/HLA-DR7複合体に対する自己抗体が陽性であり、抗カルジオリピン抗体、抗β2GPI 抗体のそれぞれが陰性であるAPS患者の約50%でβ2GPI /HLA-DR7複合体に対する自己抗体が陽性となった。続いて、APS患者と健常人の流産絨毛を用いて、proximity ligation assay(PLA)を行った。APS患者の流産絨毛では、脱落膜の血管内皮細胞にMHCクラスIIとβ2GPIの共発現を認めたが、健常人の流産絨毛では認められなかった。最後に、EY2C9がβ2GPI/HLA-DR7複合体を発現した293T細胞に対して特異的に補体依存性細胞傷害を発揮することを証明した。